同じ取引を、自己資本・流動性・レバレッジ等の複数の視点から比較する

全15問 / 基準日:2026年8月10日 / 作成:AddWisteria Lab
本ページは公開資料に基づく一般的な制度解説です。 個別取引の規制上の取扱いは、適用基準、契約条件、相手方、残存期間、担保、格付、 通貨、会計処理、法的相殺可能性等によって変わります。
B01 自己資本比率規制、LCR、NSFR、レバレッジ比率は、それぞれ何を測っているのですか?
回答

自己資本比率規制は「損失に耐えられるか」、LCRは「短期の資金流出に耐えられるか」、NSFRは「資産を安定的に調達しているか」、レバレッジ比率は「リスク評価にかかわらず資産等を膨らませ過ぎていないか」を測る。

同じ残高でも、自己資本比率規制ではリスク・ウェイト、LCRでは30日以内の流出入とHQLA、NSFRでは残存期間・相手方・換金性、レバレッジ比率では原則として総エクスポージャー額が問題となる。

B02 貸出金は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように見方が異なりますか?
回答

自己資本比率規制では、借り手、担保、延滞状況、適用手法等に応じて信用リスク・アセットを算定する。LCRでは、30日以内に契約上返済され、かつ全額弁済の見込みが十分高い部分を資金流入として扱う。ただし、相手方等に応じた流入率や資金流入額全体の上限がある。

NSFRでは、貸出の残存期間、相手方、担保、リスク・ウェイト、処分上の制約等に応じてRSFを算定する。長期で換金しにくい貸出ほど、一般に多くの安定調達を必要とする。

B03 国債は、自己資本比率規制と流動性比率規制でどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、発行国、通貨、格付、適用手法等に応じて信用リスク・ウェイトを判定する。日本国債が常に全ての規制・通貨で同じ扱いになるわけではない。

LCRでは、所定の要件と運用上の要件を満たす国債はHQLAとなり得る。NSFRでは、HQLAとしての区分、処分上の制約等によりRSFが決まる。一方、レバレッジ比率では、低リスク資産であっても原則としてエクスポージャーに含まれる。信用リスクが低いことと、総量規制の対象外であることは同じではない。

B04 社債やCP(コマーシャルペーパー)は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、発行体・格付・残存期間・適用手法等により信用リスク・アセットを算定する。LCRでは、社債やCPという名称だけでは足りず、非劣後性、信用力、市場規模、取引の活発さ、ストレス時の価格下落等の要件を満たす場合に限りレベル2資産となり得る。

NSFRでは、HQLA区分、残存期間、処分上の制約等に応じてRSFが決まる。格付が高くても、市場流動性や自由処分性の要件を満たさなければLCR上のHQLAにはならない。

B05 株式は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、株式等エクスポージャーとして、保有目的、上場・非上場、発行体との関係、適用手法等に応じたリスクを認識する。金融機関の資本調達手段を保有する場合には、自己資本からの控除が問題となることもある。

LCRでは、全ての株式がHQLAとなるわけではない。所定の信用・市場流動性・価格下落等の要件を満たす一部の上場株式がレベル2B資産となり得る。NSFRでは、流動資産区分、上場性、処分制約等に応じてRSFを判定し、非上場株式や換金制限の強い持分は一般に高い安定調達を必要とする。

B06 投資信託やファンド持分は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、ファンドの裏付資産を確認するルック・スルー方式、運用規約等に基づくマンデート方式等によりリスク・ウェイトを算定する。ファンドの借入等によるレバレッジも反映する。

LCRでは、投資信託・ファンド持分という名称だけでHQLAとはならない。所定の要件を満たす限定的な場合を除き、裏付資産が国債であっても持分自体の換金性・法的構造を確認する必要がある。NSFRでは、持分の区分、換金可能時期、ロックアップ、裏付資産等を踏まえてRSFを判定する。

B07 劣後債は、銀行が発行する場合と保有する場合で規制上の意味が異なりますか?
回答

異なる。銀行が発行する劣後債は、契約が所定の劣後性、損失吸収性、最低満期等の要件を満たせばTier2資本となり得る。これは銀行側の損失吸収力を高める方向に働く。

一方、銀行が他の金融機関の劣後債を保有する場合は、保有資産として信用リスクを負い、発行体の資本調達手段に該当すれば自己資本からの控除対象となることもある。LCRでは劣後性のある社債は通常の適格社債と同じには扱われず、NSFRでは保有資産と発行負債を別々の観点で判定する。

B08 コミットメントは、まだ融資を実行していなくても各規制の対象になりますか?
回答

対象になり得る。コミットメントは、一定の条件の下で将来資金を供給する約束であり、貸借対照表に貸出金が計上されていなくても潜在的な信用供与・資金流出を生む。

自己資本比率規制とレバレッジ比率では、未使用枠に所定の与信換算率又は掛目を乗じてエクスポージャーを認識する。LCRでは、信用供与枠・流動性供与枠、相手方、取消可能性等に応じて30日間の資金流出を見積もる。NSFRでは、与信・流動性ファシリティの未使用枠に所定のRSFを認識する。

B09 担保は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのような役割を持ちますか?
回答

自己資本比率規制では、適格担保の要件を満たせば、信用リスク削減手法としてエクスポージャー額又はリスク・ウェイトに影響する。LCRでは、担保がHQLAとして利用できるか、差入れにより拘束されているか、受入担保を再使用できるかが重要となる。

NSFRでは、担保の存在だけでなく、資産がどの程度の期間拘束されるかがRSFに影響する。したがって、「担保付きだから有利」と一律にはいえず、担保の種類、時価変動、法的有効性、処分可能性、残存期間の不一致を確認する必要がある。

B10 レポ取引は、信用リスクと流動性リスクの両方に影響しますか?
回答

影響する。レポ取引は、有価証券と現金を交換し、将来反対売買又は返還を行う資金調達・運用取引である。担保があっても、相手方の不履行、担保価値の変動、追加担保、再調達等のリスクが残る。

自己資本比率規制とレバレッジ比率では、現金債権・債務、担保、相手方エクスポージャー、相殺要件等を扱う。LCRでは30日以内の満期到来時にどの程度ロールオーバーできるかを担保区分ごとに想定する。NSFRでは現金債権・債務、相手方、残存期間、担保制約等を評価する。

B11 デリバティブ取引は、各規制で何が測定対象になりますか?
回答

自己資本比率規制では、取引相手方の信用リスク、将来の潜在的エクスポージャー、CVA(取引相手方の信用力変化による評価額変動)、必要に応じて市場リスクを測る。レバレッジ比率でも再構築コストと将来の潜在的エクスポージャー等を認識する。

LCRでは30日以内の契約上の受払、時価変動に伴う担保、格下げ条項、担保差替え、IM・VM等を資金流出入として見る。NSFRではデリバティブ資産・負債、VM、IM、清算基金等が安定調達の必要額に影響する。

B12 残存期間は、自己資本比率規制、LCR、NSFRで同じように使われますか?
回答

同じではない。自己資本比率規制では、債権のリスク評価、信用リスク削減手法の期間不一致、資本調達手段の適格性等で残存期間を用いる。LCRでは、主に30日以内に資金流出入が生じるかを判断する。

NSFRでは、6か月未満、6か月以上1年未満、1年以上等の期間区分が資産・負債の係数に広く影響する。また、コール条項や期限前返済条項がある場合、誰が権利を持つか、市場慣行上の期待があるかによって用いる期日が変わり得る。

B13 格付は、自己資本比率規制とHQLAの判定で同じ意味を持ちますか?
回答

同じではない。自己資本比率規制では、格付は主として信用リスク・ウェイトを決める材料の一つである。HQLAの判定では信用力に加え、市場規模、取引の活発さ、価格の透明性、ストレス時の価格下落等も必要となる。

また、利用できる格付の種類、依頼格付であること、複数格付の扱い等にも要件がある。高格付であっても市場で売却しにくい資産はHQLAにならず、反対に格付だけを見て規制間の区分を共通化することも適切ではない。

B14 相殺は、自己資本比率規制、LCR、NSFR、レバレッジ比率で同じ条件により認められますか?
回答

同じではない。各規制は、相殺を認める目的と計算対象が異なる。自己資本比率規制では信用リスク・エクスポージャー、LCRでは30日間の資金流出入、NSFRではデリバティブやレポの資産・負債、レバレッジ比率では総エクスポージャーを計算するための要件が定められている。

会計上純額表示されていることだけでは足りず、法的に有効なネッティング契約、同一相手方、同一決済日、同時決済の意図等が求められる場合がある。ある規制で相殺できても、別の規制で当然に相殺できるわけではない。

B15 CCPを利用する取引は、各規制でどのような意味を持ちますか?
回答

CCPを利用すると、当初の取引相手方との債権・債務がCCPとの関係に置き換えられ、参加者間の取引を集約できる。適格CCP向け取引には自己資本比率規制上の特別な扱いがある一方、取引証拠金、清算基金、清算参加者との関係等は別途評価される。

LCR・NSFRでは、CCPへの証拠金差入れや追加拠出、清算に伴う資金授受が流動性に影響する。CCPは相手方リスクを消滅させるのではなく、集中管理し、証拠金・清算基金・破綻処理手続等で抑制する仕組みである。

章の主な根拠資料: [S2] [S3] [S4] [S5] [S6] [S8] [S13]

[S2] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2026年5月22日更新版)
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[S3] 金融庁「自己資本比率規制に関するQ&A」(2026年5月25日までの追加・修正を反映)
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[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
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[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
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[S6] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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[S13] 日本証券クリアリング機構
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