非リスクベースの総量規制と決済途上取引の論点を整理する

全8問 / 基準日:2026年8月10日 / 作成:AddWisteria Lab
本ページは公開資料に基づく一般的な制度解説です。 個別取引の規制上の取扱いは、適用基準、契約条件、相手方、残存期間、担保、格付、 通貨、会計処理、法的相殺可能性等によって変わります。
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G01 レバレッジ比率は、自己資本比率をどのように補完するのですか?
回答

自己資本比率は、資産等のリスクの大きさに応じた「リスク・アセット」を分母とする。これに対し、レバレッジ比率は、原則としてリスク・ウェイトを使わず、資産、デリバティブ、証券金融取引、オフ・バランス取引等から算出するエクスポージャー額を分母とする。

このためレバレッジ比率は、低いリスク・ウェイトの取引が大量に積み上がることや、リスク測定の誤差によって自己資本比率だけでは捉えにくい過度な借入依存を抑える補完指標となる。二つの比率はどちらか一方で代替できるものではない。

G02 レバレッジ比率では、なぜ原則としてリスク・ウェイトを使わないのですか?
回答

リスク・ウェイトに依存しない単純な測定軸を設け、自己資本比率とは異なる角度から銀行の規模と自己資本の関係を見るためである。内部モデルや外部格付けの違い、将来のリスク変化を完全には見通せないこと等を踏まえ、低リスクと評価された資産の急拡大にも歯止めをかける。

ただし、レバレッジ比率も単純な貸借対照表合計を使うわけではない。デリバティブ、レポ等の証券金融取引、未使用のコミットメント等について、告示上の換算・調整を行う必要がある。

G03 貸借対照表上の資産額と、レバレッジ比率のエクスポージャー額は同じですか?
回答

同じではない。貸借対照表上の資産を出発点とする部分はあるが、会計上の相殺が規制上そのまま認められるとは限らず、自己資本から控除した項目等について調整も行う。

さらに、デリバティブの将来の価格変動に備える額、レポ等の証券金融取引の相手方信用リスク、保証・コミットメント等のオフ・バランス取引も加わる。財務諸表の数字だけで最終的な分母を判断することはできない。

G04 デリバティブ取引は、レバレッジ比率でどのようにエクスポージャーへ換算されますか?
回答

デリバティブは、現在の時価に基づく再構築コストと、将来の価格変動に備える潜在的なエクスポージャーを組み合わせて算定する。再構築コストとは、相手方が直ちに債務不履行となった場合に同等の取引を再度行うための費用である。

適格な変動証拠金、法的に有効な一括清算契約、中央清算機関との取引等には所定の調整がある。ただし、会計上の純額表示や担保の授受があるだけで自動的に純額となるわけではなく、告示の要件を取引単位で確認する必要がある。

G05 レポ等の証券金融取引は、レバレッジ比率でどのように扱われますか?
回答

レポ等の証券金融取引では、会計上認識する資産額に加え、受け取った証券等の価値が相手方への資金提供額を下回る可能性等を反映した相手方信用リスクを算定する。レポは、証券を担保に資金を貸し借りする経済効果を持つ取引である。

同じ相手方との複数取引を相殺できるのは、同一の法的に有効な契約、同じ最終決済日、債務不履行時の一括清算可能性等の要件を満たす場合に限られる。担保があるという理由だけでエクスポージャーがゼロになるわけではない。

G06 未使用のコミットメントは、レバレッジ比率にも含まれますか?
回答

含まれる。コミットメントとは、一定の条件の下で将来の貸出や資金提供を約束する契約である。まだ貸し出されていなくても、相手方が枠を利用すれば銀行のエクスポージャーとなるため、未使用額に所定の掛目を乗じてオフ・バランス取引として算入する。

掛目は、契約の種類、取消可能性、満期等によって異なる。一方的かつ無条件に取り消せるとされる枠も、契約文言だけでなく、実務上本当に取り消せるかを含めて判定する必要がある。

G07 決済途上の受取債権と支払債務は、どのような場合に相殺できますか?
回答

すべての決済途上取引を自由に相殺できるわけではない。一般に、同一の最終決済日であること、相殺が法的に有効であること、純額決済又は実質的に同時決済となる仕組みがあること、決済を完了できる運用体制があること等の要件を確認する。

また、証券金融取引の相殺と、通常の売買に伴う決済債権・債務の扱いは規定が異なり得る。会計上の表示、決済機関の仕組み、契約、決済日、通貨を照合し、適用する告示条文を特定する必要がある。

G08 DVP決済であれば、決済途上取引を必ず純額で計上できますか?
回答

必ずではない。DVP(Delivery Versus Payment)決済とは、証券の引渡しと代金の支払いを相互に条件付け、一方だけが実行される元本リスクを減らす仕組みである。DVPは同時決済の事実を裏付ける重要な要素だが、それだけで規制上の相殺要件をすべて満たすとは限らない。

純額計上の可否は、法的な相殺可能性、同一決済日、決済システムの設計、日中信用の扱い、決済失敗時の処理等も含めて判断する。DVPであることと、会計又はレバレッジ比率上の純額表示は分けて確認すべきである。

章の主な根拠資料: [S6] [S7] [S8] [S12]

[S6] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」
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[S7] 金融庁「レバレッジ比率規制に関するQ&A」
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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[S12] 証券保管振替機構「DVP決済の概要」
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