短期流動性ストレスと適格流動資産の考え方を整理する
D01 LCRは、なぜ30日間のストレスを対象としているのですか?
LCRは、銀行固有の問題と市場全体の混乱が重なる厳しい流動性ストレスを想定し、銀行が自力で対応策を講じるための時間を確保する制度である。30日間は、預金流出、市場調達の縮小、格下げに伴う追加担保、未使用枠の引出し等が同時に起きるシナリオを測る期間として設定されている。
30日を超えれば資金繰りを見なくてよいという意味ではない。中長期の期間構造はNSFRや銀行自身の流動性リスク管理で補完される。
D02 HQLAには、どのような資産が含まれますか?
HQLAには、現金、中央銀行預け金、一定の国債・政府保証債等のレベル1資産、所定の要件を満たす公共部門債、社債、CP、カバード・ボンド等のレベル2A資産、一定の住宅ローン担保証券、社債、上場株式等のレベル2B資産が含まれ得る。
ただし、資産種類だけで決まるものではない。信用力、市場規模、取引の活発さ、ストレス時の価格下落、非劣後性、自由処分性、管理体制等の要件を満たす必要がある。
D03 レベル1、レベル2A、レベル2Bの資産は、何が違うのですか?
主な違いは、ストレス時の換金性と価値の安定性である。レベル1は最も質が高く、原則として掛目なしで算入される。レベル2Aは15%、レベル2Bは資産区分に応じて25%又は50%の掛目が適用される。
また、レベル2資産にはHQLA全体に占める上限があり、レベル2Bにはさらに上限がある。これは、見かけ上の時価全額を現金同等として扱わず、ストレス時の価格下落や市場流動性の低下を織り込むためである。
D04 HQLAに該当する資産であれば、すべてLCRに算入できますか?
できない。資産種類・信用力等からレベル1、2A又は2Bの候補に該当しても、自由処分性、自由移動性、換金を行う運用体制等の運用上の要件を満たす必要がある。
担保差入れ、分別管理、法令・契約上の売却制限、グループ内の送金制限等があれば算入できないことがある。さらに、掛目、レベル2資産の上限、通貨別の流動性ニーズとの関係も考慮される。
D05 「自由に処分できること」と「市場で売却しやすいこと」は、同じ意味ですか?
異なる。市場で売却しやすいことは、取引量、価格透明性、買い手の厚み、ストレス時の価格安定性等の市場流動性を指す。自由に処分できることは、銀行がその資産を担保提供、法令、契約、内部管理等に妨げられず現金化できる状態を指す。
市場性の高い国債でも担保として拘束されていれば自由処分性を欠く。一方、契約上自由でも市場に買い手が乏しければHQLAとしての市場要件を満たさない。両方の確認が必要である。
D06 受け入れた担保は、銀行自身が保有するHQLAとして算入できますか?
条件を満たせば算入できる場合がある。受入担保がHQLAの資産要件を満たし、銀行が再使用又は売却でき、分別管理や契約上の制限がなく、既に第三者へ差し入れていないこと等が必要である。
会計上銀行の資産に計上されていない受入担保であっても、LCRでは自由処分性を有するかが重要となる。ただし、返還義務、相手方の担保差替権、元取引の満期等も含め、二重計上が生じないよう確認する必要がある。
D07 差し入れた担保でも、未使用であればHQLAに算入できますか?
「未使用」の意味によって異なる。資産が担保として差し入れられ、相手方のために拘束されている場合は、通常、自由処分性を欠くためHQLAに算入できない。
一方、担保プールへ登録されていても実際の取引を担保しておらず、銀行がいつでも制約なく引き出して現金化できる部分は、契約・制度上の取扱いを確認した上で算入できる余地がある。名称ではなく、基準日時点の法的・実務的な拘束状態で判断する。
D08 満期保有目的の有価証券は、HQLAに算入できますか?
会計上「満期保有目的」であることだけで直ちに除外されるわけではないが、実際にストレス時に現金化できることが必要である。
売却が法令上可能であっても、売却による会計上の影響、内部方針との不整合、経営上の制約等により実質的に現金化できない場合は、運用上の要件を満たさない可能性がある。会計分類とLCR上の自由処分性は別概念であるが、両者の整合を確認する必要がある。
D09 社債やCPは、どのような場合にレベル2資産となりますか?
所定の信用力を有し、劣後的でなく、市場で広く活発に取引され、公開情報から評価しやすく、過去のストレス時にも価格下落等が一定範囲に収まったものが候補となる。発行体が金融機関等又はその関係会社でないこと等も重要である。
より高い信用力・価格安定性を満たすものはレベル2A、一定範囲のものはレベル2Bとなり得る。銘柄区分、格付、発行体、市場データ、依頼格付の有無等を個別に確認する。
D10 海外子会社が保有するHQLAは、銀行グループ全体のLCRに自由に算入できますか?
自由には算入できない。連結対象の海外子会社が保有する資産であっても、現地規制、送金規制、税制、通貨交換の制約、少数株主の権利等により、親銀行の資金流出に充てられないことがある。
連結LCRでは、当該拠点の純資金流出を超えるHQLAをどこまでグループ内で移動できるかを確認する。資産を連結していることと、流動性を自由に移動できることは別である。
