J.信託・銀行業務・市場インフラ

信託勘定・銀行業務・決済インフラの基礎を整理する

全6問 / 基準日:2026年8月12日 / 作成:AddWisteria Lab
本ページは公開資料に基づく一般的な制度解説です。個別取引の規制上の取扱いは、適用基準、契約条件、相手方、残存期間、担保、格付、通貨、会計処理、法的相殺可能性等によって変わります。
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J01 銀行勘定と信託勘定は、誰の財産を管理するかという点で何が違いますか?
回答

銀行勘定では、預金として受け入れた金銭は銀行の財産となり、預金者は銀行に対する払戻請求権を持つ。銀行は貸出等を自らの計算で行い、その損益と信用リスクを負う。

信託勘定では、受託者が委託者から託された財産を、契約で定めた受益者のために管理・処分する。信託財産は受託者自身の固有財産と分別して管理される。銀行勘定と信託勘定の間の取引も、外部取引と同様に条件と残高を明確に区分する必要がある。

J02 元本補塡契約のある信託は、通常の信託とどのように異なりますか?
回答

通常の信託では、原則として信託財産の運用成果は受益者に帰属し、受託者は元本の損失を当然には補塡しない。元本補塡契約のある信託では、法令上認められる範囲で、信託終了時等の元本不足を受託者が補う契約を結ぶ。

この契約により受託銀行は信託財産の損失を負担する可能性があり、通常の信託より銀行自身の信用・流動性との結び付きが強い。NSFR等では、対象となる元本補塡契約付き信託について、銀行勘定と信託勘定の内部取引を消去し、外部との資産・負債を所定の方法で算入する。

J03 信託銀行以外の銀行も、信託業務を行うことがありますか?
回答

ある。日本では、銀行その他の金融機関が「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づく認可を受け、信託業務を兼営する仕組みがある。商号に「信託銀行」と入っているかどうかだけで、取扱業務の範囲を判断することはできない。

反対に、信託会社は信託業を営むが、銀行免許がなければ預金受入れ等の銀行業を行うものではない。業務の確認では、免許・認可、信託の種類、契約主体を確認する必要がある。

J04 コルレス、カストディ、クリアリング、キャッシュ・マネジメントが組み合わされる場合、契約・口座・取引をどのように管理しますか?
回答

一つの顧客関係の中で複数のサービスが提供される場合でも、すべてを一つの業務区分や口座へまとめるのは適切ではない。コルレスでは銀行間口座と送金・決済指図、カストディでは証券口座と保有残高・権利処理、クリアリングでは取引、相殺後の債権・債務、証拠金、決済指図、キャッシュ・マネジメントでは企業グループの口座、入出金、資金集中、支払指図を、それぞれの契約と役割に対応させて管理する必要がある。

システム上は、契約主体、顧客・相手方、サービス種別、口座、通貨、証券、取引、決済市場、清算機関、保管先、手数料、締切時刻、処理状態を別の管理項目として保持し、必要な関係だけを関連付ける。受け付けた指図から清算、資金・証券の決済、残高更新、手数料計上までを追跡できるようにし、サービス間で同じ残高や取引を重複計上しないことが重要である。

J05 DVP決済は、証券取引の決済リスクをどのように減らしますか?
回答

DVPは、証券の引渡しが行われる場合に限って代金を支払い、代金が支払われる場合に限って証券を引き渡す仕組みである。これにより、代金だけを支払って証券を受け取れない、又は証券だけを渡して代金を受け取れないという元本リスクを減らす。

ただし、相手方が決済できず取引をやり直す再構築コスト、決済時刻までの資金・証券の手当て、日中流動性、システム障害等のリスクは残る。DVPは決済リスクを大きく減らす仕組みであるが、取引損失や流動性リスクをすべてなくすものではない。

J06 上場商品と店頭商品は、商品名だけで区分できますか?
回答

商品名だけでは区分できない。同じ原資産や経済的な効果を持つ取引でも、取引所で成立する場合と、当事者間の相対契約として成立する場合がある。また、店頭取引であっても、中央清算機関(CCP:売り手と買い手の間に入り、双方の相手方となって清算する機関)を利用することがあるため、「店頭取引は相対清算、上場取引は中央清算」と一律には判断できない。

システムでは、商品種別とは別に、取引場所、契約形態、標準化された契約かどうか、清算方法、清算機関、証拠金・担保契約、決済方法を管理する必要がある。一つの「上場・店頭区分」だけから、価格評価、相手方、証拠金、会計処理、リスク計測、規制計算を自動的に決めず、それぞれの処理目的に必要な条件を確認することが重要である。

章の主な根拠資料: [S4] [S5] [S8] [S9] [S10] [S11] [S12] [S13] [S16]

[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
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[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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[S9] 金融庁「元本補塡契約のある信託勘定に係る流動性比率規制Q&A」
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[S10] 金融庁「信託会社等に関する総合的な監督指針」
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[S11] e-Gov法令検索「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」(参照日:2026年8月12日)
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[S12] 証券保管振替機構「DVP決済の概要」
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[S13] 日本証券クリアリング機構
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[S16] 信託協会「信託について」
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