原資産の組成者
保有資産を資金化し、調達手段を多様化できる。構造によっては信用リスクや金利・期間の偏りを移転し、資産・負債管理や規制資本管理に利用できる。
証券化の基本構造
金融システム担当者向けに、原資産、関係者、特別目的会社、優先劣後構造、信用補完、資金配分、情報追跡まで整理する
証券化とは、企業や金融機関等が保有する貸付債権その他の資産をまとめ、その資産から生じる元本・利息等の回収や信用リスクを裏付けとして、証券、受益権その他の持分を組成する仕組みである。 資産を保有していた者は資金調達やリスク移転を行うことができ、投資家は原資産と商品構造に応じた収益とリスクを引き受ける。
一般には、原資産から生じる回収金や信用リスクを証券・受益権等へ組み替える仕組みを広く「証券化」と呼ぶ。一方、銀行の自己資本比率規制では、名称や法形式ではなく、原資産の信用リスクを優先部分と劣後部分等の二つ以上に分け、その一部または全部を第三者へ移転する性質があるかによって「証券化取引」への該当性を判断する。
| 単純化した例 | 一般的な商品説明 | 自己資本比率規制上の見方 |
|---|---|---|
| ローンプールを信託し、信用リスクを分けずに単一順位の受益権だけを発行する。 | 広い意味で証券化と説明されることがある。 | 優先・劣後の二つ以上への階層化がなければ、規制上の「証券化取引」の基本定義には通常該当しない。 |
| 同じローンプールを、上位・中位・劣後の三つへ分けて発行する。 | 証券化商品である。 | 信用リスクを優先劣後関係にある二つ以上へ階層化しているため、規制上の定義を検討する対象となる。 |
| 原資産を譲渡せず、保証や信用デリバティブで階層化した信用リスクを移転する。 | 一般的な「資産を売って証券を発行する仕組み」のイメージから外れやすい。 | 要件を満たせば、合成型証券化として規制上の証券化取引になり得る。 |
保有資産を資金化し、調達手段を多様化できる。構造によっては信用リスクや金利・期間の偏りを移転し、資産・負債管理や規制資本管理に利用できる。
原資産の種類、満期、通貨、支払順位、信用補完等が異なる商品から、許容できるリスクと収益に合う部分を選択できる。
貸付市場と資本市場をつなぎ、住宅ローンや企業向け貸付等へ資金が循環する経路を増やす。
リスクが消えるわけではない。複雑な契約、情報の非対称性、期限前返済、市場流動性、関係者破綻等の新たな確認事項が生じる。
| 観点 | 普通社債 | 投資信託 | 証券化商品 |
|---|---|---|---|
| 主な支払原資 | 発行企業の事業全体から生じる資金 | ファンドが保有する資産の運用成果 | 特定の原資産プールから生じる回収金 |
| 投資家の持つ権利 | 発行企業に対する債権 | ファンド財産に対する受益権・持分 | 債券、受益権その他の持分。法形式により異なる。 |
| 信用リスクの中心 | 発行企業全体の信用力 | 組入資産の価格・信用リスク等 | 原資産の質に加え、優先劣後、信用補完、回収・配分構造 |
| 元本の戻り方 | 満期一括または契約上の分割償還 | 解約・償還時の基準価額等 | パススルー、順次償還、比例償還等、契約に従う。 |
| 役割 | 具体的な主体 | 主な役割 | システム上の注意 |
|---|---|---|---|
| 債務者 | 住宅ローン利用者、企業、リース利用者等 | 原資産となるローン・債権の元本、利息等を支払う。 | 証券化商品の発行体・投資家とは異なる階層で管理する。 |
| 原資産の組成者 | 銀行、貸金業者、リース会社、クレジット会社等 | 貸付・割賦・リース等により原資産を組成し、証券化目的の器へ譲渡するなどして証券化を行う。一般にオリジネーターとも呼ばれる。 | 原資産の組成者と債権管理回収会社が同一でも、役割は分けて保持する。 |
| 特別目的会社等 | 特別目的会社、特定目的会社、信託等 | 原資産を取得・保有し、証券・受益権等を発行し、回収金を投資家へ配分するための器となる。 | 法的発行体、資産保有主体、信託受託者が同一とは限らない。 |
| 債権管理回収会社 | 原資産の組成者、専門会社等 | 債務者への請求、元利金回収、延滞・期限前返済・担保処分等を管理する。一般にサービサーとも呼ばれる。 | 回収実績、延滞、期限前返済、損失等の主要な情報源となる。 |
| 組成調整者 | 証券会社、銀行等 | 法的構造、優先劣後構造、発行条件、格付取得、投資家販売等を調整する。一般にアレンジャーとも呼ばれる。 | 商品条件の版、組成案件、発行回号を関連付ける。 |
| 投資家 | 銀行、保険会社、年金、ファンド等 | 証券化商品の証券・受益権・持分等を取得する。 | 直接の債務者が発行体でも、経済的リスクは原資産と商品構造に依存する。 |
| その他の関係者 | 受託者、予備の債権管理回収会社、格付機関、保証者、金利交換取引の相手方等 | 財産管理、業務代替、信用評価、信用補完、金利・通貨リスク調整等を担う。 | 法人名だけでなく、案件ごとの役割・契約・有効期間を保持する。 |
SPV(証券化等の限定された目的に用いる法的な器)は、Special Purpose Vehicleの略称であり、日本語では特別目的事業体等と表される。 会社形態の場合はSPC(特別目的会社)と呼ばれることもある。資産譲渡型では、原資産を証券化目的の器へ移し、その資産と回収金を証券化取引のために管理する。
原資産の組成者が持つ他の資産・負債と証券化対象資産を法的・会計的に区別する。
回収金をどの証券・持分へ、どの順序で配分するかを契約で定める。
原資産の組成者の倒産リスクから対象資産と投資家の権利を一定程度切り離す構造を作る。
事業目的、追加債務、口座、契約等を限定し、証券化取引以外のリスクが入り込むことを抑える。
| 判断軸 | 主な問い | 主な確認対象 |
|---|---|---|
| 法的な資産移転 | 原資産と回収金が法的に有効に移転し、第三者や倒産手続に対抗できるか。 | 真正売買、譲渡禁止・解除条件、対抗要件、信託、買戻し義務、倒産隔離 |
| 会計上の認識中止 | 譲渡人の財務諸表から原資産の全部または一部を外せるか。 | リスクと経済価値、支配、継続的関与、会計基準と監査判断 |
| 規制上の信用リスク移転 | 銀行の自己資本比率規制上、重要な信用リスクが有効に第三者へ移転したと認められるか。 | 銀行の役割、保有する劣後部分、保証・補完、暗黙の支援、告示・Q&A上の要件 |
三つは関連するが、同じ結論になるとは限らない。法的に資産が移転していても会計上の認識中止や規制上のリスク移転が認められない場合があるため、判定結果・基準日・根拠資料・承認者を別々に保持する。
証券化後も、債務者が特別目的会社や多数の投資家へ直接支払うとは限らない。 債権管理回収会社が、請求、元利金回収、残高管理、延滞管理、期限前返済、督促、担保処分等を行い、回収資金と管理情報を証券化の仕組みへ連携する。
証券化では、同じ原資産プールから生じる回収金と信用損失を、支払順位・損失負担順位の異なる複数の階層へ分けることがある。 この階層をトランシェ(支払順位や損失負担順位の異なる区分)と呼ぶ。上位をシニア、中間をメザニン、下位をジュニア、最初に損失を負担する最劣後部分をエクイティまたはファーストロスと呼ぶことがある。
| 一般的な名称 | 日本語での位置付け | 単純化した特徴 |
|---|---|---|
| シニア・トランシェ | 上位部分 | 支払順位が高く、信用損失の負担順位は後になる。 |
| メザニン・トランシェ | 中位部分 | シニアと下位部分の間に位置し、下位部分を超えた損失をシニアより先に負担する。 |
| ジュニア・トランシェ | 劣後部分 | シニア・メザニンより支払順位が低く、信用損失を先に負担する。 |
| エクイティ/ファーストロス | 最劣後部分・残余持分 | 最初の損失を負担し、費用や上位部分への支払い後の残余を受け取ることがある。 |
名称は案件ごとに異なり、ジュニアとエクイティを別の階層とする場合も、同じ最劣後部分を指す場合もある。名称だけで順位を決めず、契約上の支払順位と損失負担順位を確認する。
| 区分 | 初期額 | 今回の損失負担 | 損失反映後の単純化残高 |
|---|---|---|---|
| シニア(上位) | 70 | 0 | 70 |
| メザニン(中位) | 20 | 2 | 18 |
| エクイティ(最劣後) | 10 | 10 | 0 |
| 合計 | 100 | 12 | 88 |
この例は「どの階層が何番目に信用損失を負担するか」を示す。実際には、損失の定義、計上時点、回収による戻入れ、元本不足の記帳方法、超過収益や準備金の使用順序等を契約で確認する必要がある。
原資産から回収した資金は、契約で定めた優先順位に従い、税金・費用、債権管理報酬、各階層の利息・元本、残余持分等へ配分される。 この資金配分規則は一般にウォーターフォール(回収金の支払順位を定めた規則)と呼ばれる。一方、原資産の損失は、通常、資金の支払順位とは逆方向にエクイティやジュニア等の下位部分から吸収される。
信用補完とは、原資産に延滞・債務不履行・回収不足等が生じても、シニア等の上位部分へ直ちに損失が及ばないようにする仕組みである。 優先劣後構造のほか、発行額を上回る原資産、準備金、保証等が利用される。
エクイティ、ジュニア、メザニン等の下位部分が契約上の順序で損失を先に吸収し、シニア等の上位部分を一定範囲まで保護する。
発行証券残高を上回る原資産を確保し、差額部分を損失吸収余力として機能させる。
現金準備口座等を設定し、一時的な資金不足や一定の損失へ備える。
原資産からの利息等と証券化商品の支払利息・費用等との差額を、損失吸収や準備金積立てへ充てる。
保証会社、保険会社等の第三者が、契約範囲内の損失や支払不足を補う。
回収時期と支払時期のずれ等による一時的な資金不足へ備える。信用損失を最終的に負担する信用補完とは目的が異なる。
| 名称 | 日本語での意味 | 主な裏付資産 | 代表的な確認項目 |
|---|---|---|---|
| ABS(資産担保証券) | 資産担保証券 | 広い意味ではMBS等を含む資産担保証券全般。狭い意味では自動車ローン、クレジット、リース、売掛債権等を裏付けとする商品。 | 用語の範囲、債務者分散、延滞率、債務不履行率、回収率、希薄化率(原資産残高に対する希薄化額の割合)、期限前返済、組成時期別実績等 |
| MBS(モーゲージ担保証券) | 不動産担保ローンを裏付けとする証券 | 住宅ローンまたは商業用不動産向け貸付 | RMBS・CMBSの別、担保評価、期限前返済、満期時借換え、回収手続等 |
| RMBS(住宅ローン担保証券) | 住宅ローン担保証券 | 個人向け住宅ローン債権 | 担保評価額に対する貸付割合、地域、金利種別、延滞、期限前返済、返済期間等 |
| CMBS(商業用不動産ローン担保証券) | 商業用不動産ローン担保証券 | オフィス、商業施設、ホテル等に係る不動産向け貸付 | 元利金返済余力、担保評価額に対する貸付割合、物件稼働率、テナント、満期時借換え等 |
| CDO(債務担保証券) | 債務担保証券 | 社債、貸付債権、信用リスク等 | 現物型・合成型、参照資産、債務者・業種集中、相関、損失配分、運用者等 |
| CLO(ローン担保証券) | ローン担保証券 | 企業向け貸付債権等 | 債務者格付、業種・債務者集中、債務不履行率、回収率、銘柄入替え、ポートフォリオ判定等 |
| ABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー) | 資産担保コマーシャル・ペーパー | 売掛債権、リース債権等の短期資産 | 導管体、売却人、スポンサー、希薄化、流動性補完、信用補完、満期の借換え等 |
名称は主な裏付資産を示すが、分類は一つの階層ではない。MBSの下にRMBS・CMBSを置く説明、CDOのうち貸付債権を中心とする商品をCLOと呼ぶ説明、MBSを広義のABSへ含める説明がある一方、市場実務ではABSをMBS以外の資産担保証券に限って使うこともある。用語名だけで判定せず、原資産と契約構造を確認する。
売掛債権、クレジットカード債権等では、債務者が支払不能になっていなくても、商品の返品、売上の取消し、値引き、リベート(販売実績等に応じた代金の払い戻し)、請求誤り、債務者が売却人に対して持つ債権との相殺等により、回収対象となる債権額が減ることがある。このような減額が証券化の原資産や回収金を減少させるリスクを、希薄化リスクという。
債務者の支払能力悪化や破綻等により、契約どおりの回収ができなくなる。
返品、値引き、相殺等の商取引上の理由により、そもそも回収すべき債権額が減る。
原則として組成時に原資産を確定し、回収・期限前返済・損失に応じてプール残高が減る。限定的な表明保証違反等による買戻し・差替えは別途管理する。
一定期間、回収された元本で新たな適格資産を追加する。追加・差替えの適格基準、上限、集中判定、終了条件を期中に確認する。
回転期間等の終了後、回収元本を投資家への元本償還へ回し、プールと発行残高を減らしていく。
延滞率、累積損失率、超過収益等の条件へ抵触すると、追加取得を停止し、予定より早く元本回収・償還を優先する場合がある。
| 方式 | 単純化した説明 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| パススルー | 原資産から回収した元本を、所定の調整後に投資家へ通過させる。 | 期限前返済、回収から支払までの時差、手数料、ファクター |
| 順次償還 | シニア等の上位部分の元本を先に減らし、その償還後に次順位を減らす。 | 上位保護の増減、切替条件、最終期限、残存区分の平均期間 |
| 比例償還 | 複数の区分へ所定の割合で元本を配分する。 | 配分比率、比例償還の継続条件、順次償還への切替条件 |
| 計画償還・満期一括 | 予定表に沿う元本償還、または満期時に大きな元本を償還する。 | 積立て、借換え、売却、期限前償還条項、最終期限時の資金確保 |
実際の契約では複数方式を組み合わせ、原資産実績や発動条件により方式を切り替えることがある。「元本償還方式」を一項目だけで固定せず、適用期間・条件・計算規則版を持つ。
日本で実際に発行されている証券化商品の例として、住宅金融支援機構のMBS(住宅ローン債権を裏付けとする資産担保証券)がある。 提携する民間金融機関が長期固定金利住宅ローン【フラット35】を販売・実行し、機構が住宅ローン債権を買い取り、信託したうえで、機構自身が債券を発行する。
| 観点 | 2026年の公開情報で確認できる内容 | 理解できること |
|---|---|---|
| 原資産 | 提携民間金融機関が実行し、機構が買い取った【フラット35】の住宅ローン債権 | 債券の発行体だけでなく、裏付住宅ローンの属性と回収特性を確認する必要がある。 |
| 発行体 | 独立行政法人住宅金融支援機構 | 一般化した特別目的会社発行型とは異なり、機構自身が債券を発行する。 |
| 信託 | 住宅ローン債権を他益信託(委託者以外を受益者とする信託)として信託し、債券の担保とする。 | 発行体、信託財産、受益者、債券保有者の関係を区別する。 |
| 信託会社 | 2026年度は三井住友信託銀行 | 発行体とは別に、信託財産を管理する受託者が存在する。 |
| 事務受託会社 | 2026年度の資産担保証券では三井住友銀行 | 債券事務の担当者を案件関係者として管理する。 |
| 引受会社の例 | 第232回債では三菱UFJモルガン・スタンレー証券、野村證券、バークレイズ証券が共同主幹事 | 発行回号ごとに引受関係者と役割が変わり得る。 |
| 元利金 | 裏付住宅ローンプールの返済状況に応じた月次パススルー方式 | 住宅ローンの期限前返済により、債券の元本償還速度と平均残存期間が変化する。 |
| 通常時の信用リスク | 裏付住宅ローン債権に債務不履行が生じた場合の信用リスクは機構が負担する。 | 債券の返済速度は原資産プールに連動するが、通常時の債券支払いの信用は機構に対するものとして整理される。 |
| 受益権行使事由 | 所定の事由が発生すると債券が消滅し、投資家の信託受益権が確定する仕組みがある。 | 通常時と事由発生後で、投資家の法的権利、支払主体、回収経路が変わるため、状態を分けて管理する。 |
| グリーンMBS | 2026年6月の機構資料では、グリーンMBSは超過担保を設定せず、発行体格付に基づく商品として説明されている。 | 「機構MBSはすべて超過担保付き」と固定せず、回号・商品区分ごとの信用補完を確認する。 |
| 継続開示 | 信託債権属性、ファクター、期限前返済関連情報、元利金支払情報等 | 発行時資料だけでなく、期中の原資産・残高・回収情報を継続取得する必要がある。 |
| 観点 | 資産譲渡型証券化 | 合成型証券化 |
|---|---|---|
| 原資産 | 原資産を特別目的会社・信託等へ譲渡する構造が中心となる。 | 原資産自体は原資産の組成者側に残ることがある。 |
| 移転するもの | 資産、回収金および信用リスクを組み合わせて移転する。 | 保証・信用デリバティブ等により信用リスクを移転する。 |
| 資金調達 | 証券等の発行代金が原資産取得代金を通じて資金調達につながる。 | 信用リスクの移転や規制資本管理が中心となり、必ずしも原資産の売却資金調達を伴わない。 |
| 主な確認対象 | 資産譲渡、真正売買、回収金、資産保有主体、証券発行、倒産隔離 | 参照資産群、信用補完契約、信用事由、損失計算、保護提供者、リスク移転の有効性 |
| 主な状態 | 選定、譲渡、発行、回収、償還、終了 | 契約開始、保護有効、信用事由判定、損失確定、補償支払、契約終了 |
銀行が証券化商品へ投資する場合、外部格付と利回りだけでは十分ではない。 原資産の内容、組成時の審査、優先劣後構造、信用補完、債権管理、回収金配分、期限前返済、市場流動性、関係者の信用・業務継続性等を確認する。
債務者属性、格付、貸付条件、担保、延滞、債務不履行、回収率、希薄化率、地域・業種・債務者集中等。
証券化を前提としたために貸付審査が緩んでいないか、適格基準と実際の原資産が一致するか。
各階層の厚み、損失負担開始点・終了点、信用補完、支払順位、準備金、発動条件等。
元利金回収、期限前返済、返品・取消し・値引き・相殺、延滞、債務不履行損失、回収、元本償還、支払不足の繰越し等。
原資産の組成者、債権管理回収会社、保証者、受託者、金利交換取引の相手方等の信用と業務継続性。
市場価格の入手可能性、売買実績、売却可能性、価格下落、担保利用可能性等。
延滞・損失・期限前返済・回収率・金利等を変化させた場合の各階層の元利金と平均残存期間。
銀行の役割、証券化エクスポージャー該当性、適用方式、簡素性・透明性・比較可能性の要件、資本賦課、継続的な情報把握等。
SIRP(証券化商品と裏付資産に関する標準情報報告様式)は、Standardized Information Reporting Packageの略称である。 日本証券業協会は、証券化商品のリスク・リターン分析に有益な情報を整理し、住宅ローン担保証券、資産担保証券、ローン担保証券、商業用不動産ローン担保証券について参考様式を公表している。
日本証券業協会の規則は、証券化商品の販売等に際し、原資産の内容・リスクに関する情報伝達態勢を整備し、投資家が原資産まで情報を追跡できるようにすることを重視している。 したがって、報告書を作成するだけでなく、各数値の基準日、情報源、集計範囲、欠損・推計の有無を管理する必要がある。
| データ領域 | 主な項目例 | 管理上のポイント |
|---|---|---|
| 証券化案件 | 証券化案件識別番号、案件名、証券化種別、法形式、法域、組成日、終了予定日、状態 | 原資産、発行証券、関係者、規制判定を結ぶ親単位とする。 |
| 日付・期間 | 選定基準日、カットオフ日、譲渡日、信託設定日、発行日、回収期間、計算日、支払日、ファクター基準日、最終期限 | 「何日現在の構成」と「どの期間の回収」を混同せず、営業日調整とタイムゾーンも定義する。 |
| 関係者と役割 | 原資産の組成者、スポンサー、発行体、資産保有主体、受託者、債権管理回収会社、組成調整者、保証者、金利交換取引の相手方 | 法人と案件上の役割を分離し、役割の開始日・終了日を持つ。 |
| 法務・会計・規制判定 | 真正売買、対抗要件、倒産隔離、会計上の認識中止、重要な信用リスク移転、判定日、根拠資料、承認者 | 相互に関連しても独立した判断として保持し、一つの判定結果から他を自動確定しない。 |
| 原資産プール | 原資産プール識別番号、資産種類、選定基準日、対象残高、件数、通貨、適格基準、追加・差替え可否 | 発行商品と原資産群を関連付け、基準日時点の構成を再現する。 |
| プール構成履歴 | 個別原資産の加入日・離脱日・理由、追加・差替え・買戻し、回転期間、適格性判定、構成版 | 現在の構成だけでなく、各基準日にプールへ含まれていた資産と変更理由を再現する。 |
| 個別原資産 | 貸付・債権識別番号、債務者、元本残高、金利、満期、担保、格付、延滞日数、債務不履行状態、プール所属期間 | 信用リスク、集中リスク、回収予定、適格性を分析する。 |
| 債権管理・回収 | 入金日、元本、利息、期限前返済、延滞、回収、損失、費用、報告基準日 | 回収取引と残高更新を結び、訂正・取消し履歴を保持する。 |
| 希薄化・債権調整 | 希薄化取引識別番号、対象債権、発生日、返品、取消し、値引き、リベート、相殺、請求訂正、減額、調整後残高、売却人による補填・買戻し | 債務不履行損失や入金取消しとは別の事象として管理し、減額理由と原資産残高への反映を追跡する。 |
| 現金・口座 | 回収口座、利息口座、元本口座、準備金口座、入出金、資金区分、口座間振替、照合状態 | 元本・利息・回収金・費用等を分類し、銀行口座残高から投資家配分まで照合できるようにする。 |
| 発行証券・持分 | 証券識別番号、回号、通貨、発行額、利率、発行日、最終期限、支払頻度、元本償還方式 | 発行条件と銀行の保有ポジションを分ける。 |
| 元本償還・ファクター | 予定元本、実績元本、期限前返済、償還日、期首・期末残高、残高割合(ファクター)、計算根拠 | 発行額に対する残高割合と実残高を突合し、予定と実績の差を説明できるようにする。 |
| 優先劣後区分 | 優先劣後区分識別番号、トランシェ名称(シニア、メザニン、ジュニア、エクイティ等)、順位、額面、劣後性、損失負担開始点、損失負担終了点、残高、格付 | 表示名称と契約上の順位を分け、同じ案件内の複数階層を損失配分と規制計算へつなぐ。 |
| 信用補完 | 劣後、超過担保、準備金、超過収益、保証、保険、流動性補完、残高、提供者、有効期限 | 種類、利用可能額、使用済額、回復条件を時系列で持つ。 |
| 資金配分規則 | 資金配分規則識別番号、優先順位、資金源口座、支払項目、支払先、上限、繰越し、発動条件、規則版 | 適用した規則版と計算明細を保存し、再計算可能にする。 |
| 発動条件 | 超過担保判定、利払い余力判定、延滞率、累積損失率、条件値、判定結果、違反日、治癒日 | 通常配分から早期償還・支払停止・順位変更等への移行根拠を残す。 |
| 市場価格・格付 | 価格、利回り、スプレッド、価格情報源、格付機関、格付、適用日、失効日 | 価格・格付を上書きせず、情報源と時系列を保持する。 |
| 保有ポジション | 口座、証券識別番号、保有数量、取得価額、時価、売買可能数量、担保差入数量 | 商品条件と銀行自身の保有・拘束状態を分離する。 |
| 規制判定 | 銀行の役割、証券化エクスポージャー該当性、適用方式、STC適格性、リスク・ウェイト、信用リスク・アセット、判定基準日 | 商品分類を規制結果として固定せず、基準日ごとに根拠とともに保持する。 |
| 報告・証跡 | 標準情報報告項目、基準日、情報源、入手日、利用可能性、品質区分、商品説明書、債権管理報告、投資家向け報告、手動修正 | 各数値の出所、欠損、推計、承認、修正履歴を追跡する。 |
証券化案件
個別原資産
延滞解消による正常復帰、期限前完済、買戻し、適格性違反による差替えのほか、返品・値引き・相殺等による希薄化への分岐もある。希薄化は債務不履行状態への遷移とは分けて管理する。
原資産プール
条件抵触時には、回転期間の終了を待たずに追加取得を止め、早期償却へ分岐する場合がある。
発動条件
銀行が証券化取引に関係する場合、保有するシニア・メザニン等の証券だけでなく、原資産の組成者・スポンサーとして保有するジュニア・エクイティ等の劣後部分、信用補完、流動性補完、保証・信用デリバティブ等も証券化エクスポージャーとなり得る。 まず証券化取引・証券化エクスポージャーへの該当性と銀行の役割を判定し、その後に適用方式と計算条件を決める。
| 方式等 | 平易な説明 | 主な必要情報 |
|---|---|---|
| 内部格付手法準拠方式 | 原資産について銀行の内部格付手法による所要自己資本率等を算出できる場合に、証券化の計算式へ反映する方式。 | 原資産の所要自己資本率、原資産残高、延滞・債務不履行、区分の損失負担開始点・終了点、満期等 |
| 外部格付準拠方式 | 適格な外部格付、残存期間、区分の順位・厚み等を基にリスク・ウェイトを判定する方式。 | 適格格付機関、格付、長期・短期、上位・非上位、区分の厚み、満期等 |
| 内部評価方式 | 一定の資産担保コマーシャル・ペーパー取引について、承認された内部評価を用いる方式。 | 内部評価手法、外部格付との対応、導管体、流動性・信用補完、原資産情報等 |
| 標準的手法準拠方式 | 原資産へ標準的手法を適用した場合の所要自己資本率等を基に計算する方式。 | 原資産の標準的手法上のリスク・ウェイト、延滞割合、区分の損失負担開始点・終了点、満期等 |
| STC(簡素で、透明性が高く、比較可能な証券化)適格性 | 所定の要件を満たすかを判定する。 | 原資産の同質性、支払履歴、選定基準、資産譲渡、情報開示、リスク継続保有、債権管理等 |
現行の銀行自己資本比率告示では、証券化エクスポージャーについて、内部格付手法準拠方式、外部格付準拠方式、内部評価方式、標準的手法準拠方式等が定められている。 適格STC証券化、適格短期STC証券化、不良債権を裏付資産とする証券化には、それぞれ追加の要件・取扱いがある。