F.NSFR
安定調達と資産・負債の期間構造を整理する
F01 NSFRは、LCRと何が違うのですか?
LCRは30日間の厳しい資金流出に備える短期の指標である。NSFRは概ね1年の時間軸で、長期・換金困難な資産を、資本、長期負債、安定的な預金等でどの程度調達しているかを見る構造的な指標である。
LCRが十分でも、短期調達に過度に依存して長期資産を保有していれば、調達の借換えが続かないリスクがある。NSFRはこの期間の不一致を抑える役割を持つ。
F02 ASFとRSFは、何を表しているのですか?
ASFは、資本・負債のうち、概ね1年の時間軸で安定的に利用できると評価される調達額である。資本、長期負債、安定的な個人預金等には高い算入率が適用される。
RSFは、資産・オフ・バランス取引等を維持するために必要と評価される安定調達額である。換金しやすい資産には低い率、長期貸出、非流動資産、拘束資産等には高い率が適用される。NSFRはASFをRSFで割り、100%以上とすることを求める。
F03 同じ負債でも、預金者の属性や残存期間によってASF係数が異なるのはなぜですか?
ストレス時や市場環境の変化時に、調達がどの程度維持されるかが異なるためである。満期が長い負債は1年間利用できる可能性が高く、多数の個人から集めた安定預金も大口の短期市場調達より安定しやすいと評価される。
反対に、金融機関からの短期調達や期限の短い市場性調達は、満期時に更新されない可能性が高い。預金者属性、預金保険、取引関係、残存期間等を組み合わせてASF係数が設定される。
F04 満期まで1年未満となった負債は、NSFR上の安定調達として扱われますか?
一部は安定調達として扱われるが、通常、1年以上の負債と同じ100%のASFになるとは限らない。6か月以上1年未満、6か月未満等の期間区分と、相手方・負債種類に応じて係数が決まる。
個人の安定預金等は短期でも高いASFとなる一方、金融機関からの短期調達は低い又は0%となり得る。残存期間だけでなく、誰からどのように調達した資金かを確認する必要がある。
F05 Tier2資本のうち残存期間が1年未満の部分は、なぜ100%のASFとして扱われないのですか?
1年以内に償還される部分は、NSFRの時間軸である1年間を通じて利用できる安定調達ではないためである。Tier2として自己資本比率の分子に一部算入されていても、NSFRでは調達が残る期間を別の目的で評価する。
金融庁告示では、Tier2資本の基礎項目から基準日後1年以内に弁済期が到来する額を控除した部分を、100%ASFの対象としている。同じ資本調達手段でも、損失吸収力と調達期間では評価軸が異なる。
F06 貸出金のRSFは、残存期間、相手方、担保によってどのように変わりますか?
短期で換金・回収可能な貸出は比較的低いRSFとなり、長期貸出はより高いRSFとなる。金融機関向けか非金融機関向けか、残存期間が6か月未満、6か月以上1年未満、1年以上のいずれかも重要である。
1年以上の非金融機関向け貸出では、一定の低いリスク・ウェイト要件を満たす場合と、それを超える場合で係数が異なる。担保があるだけで決まらず、処分上の制約、弁済可能性、住宅ローン該当性等も確認する。
F07 HQLAは、NSFRでも常に低いRSF係数となりますか?
常にではない。処分上の制約がないレベル1、2A、2B資産は、その流動性に応じて比較的低いRSFとなるが、担保差入れ等により長期間拘束されていれば高いRSFが適用され得る。
また、LCR上のHQLA区分とNSFR上の残存期間・相手方・処分制約は別の判定軸である。HQLAという属性だけでNSFRの係数を固定せず、基準日時点の拘束状態等を確認する必要がある。
F08 担保として拘束されている資産は、NSFRでどのように扱われますか?
資産が処分できない期間に応じてRSFが調整される。拘束期間が1年以上の資産は、原則として100%のRSFとなる。6か月以上1年未満の拘束には、元の資産区分との関係で所定の扱いがある。
短期の拘束は必ずしも元の係数を変えないが、実質的に更新が繰り返され長期拘束となる場合等は事実関係の確認が必要である。担保差入れの有無だけでなく、いつ自由に処分できるようになるかが重要である。
F09 コミットメント等のオフ・バランス取引は、NSFRでなぜ所要安定調達の対象となるのですか?
未使用枠が将来引き出されると、銀行は貸出等の資産を増やすための資金を用意する必要があるからである。現在の貸借対照表に資産がなくても、契約上の潜在的な資金需要を無視すると、必要な安定調達を過小評価する。
このため、与信・流動性ファシリティの未使用枠には原則として5%のRSFが適用される。取消可能な枠、保証、その他の偶発事象には別の取扱いがあり、契約の実質に応じて区分する。
F10 ファンド持分のロックアップ期間や換金制限は、NSFRの判定にどのように影響しますか?
まず、ファンド持分自体が告示第91条から第97条までのどの資産区分に該当するかを判定し、処分上の制約がない場合のRSF算入率を決める。ファンドの裏付資産の流動性や持分の解約頻度等だけから、RSF算入率を直接決めるものではない。
そのうえで、ロックアップ、解約通知期間、ゲート条項等により持分が処分上制約のある資産に該当する場合は、第98条を適用する。処分上の制約が1年以上続く資産には100%、6か月以上1年未満では、制約がない場合の算入率が50%以下なら50%、50%を超えるなら元の算入率を適用する。制約期間が6か月未満なら元の算入率を適用する。裏付資産の流動性と、銀行が保有する持分自体を自由に処分できるかは区別して確認する必要がある。
