金融規制・銀行実務を、知りたい論点から検索して調べる

全100問 / 10カテゴリー / 基準時点:2026年8月12日 / 作成:AddWisteria Lab

本Q&Aは、日本の銀行に関係する金融規制と銀行実務について、一般的な仕組みをQ&A形式で整理したものである。自己資本比率規制、LCR、NSFR、レバレッジ比率はそれぞれ異なるリスクを測るため、同じ金融商品や取引であっても規制によって着目点や計算方法が異なる。

全100問を一つのページにまとめ、質問文から検索できるようにしている。制度全体を体系的に読む場合は各解説ページを、個別の疑問から確認する場合は本Q&Aを利用する。

本Q&Aは、公開された法令、金融庁告示・Q&A、バーゼル銀行監督委員会文書その他の公式資料を基礎とする一般的な制度解説である。個別取引の規制上の取扱いは、適用基準、契約条件、相手方、残存期間、担保、格付、通貨、会計処理、法的相殺可能性等によって変わる。

A銀行規制の基礎

銀行の健全性を支える規制の全体像を整理する

全7問
A01なぜ銀行には、一般企業とは異なる健全性規制が設けられているのですか?
回答

銀行は、預金を受け入れ、その資金を貸出や投資に回すとともに、決済機能を担っている。銀行が経営不安に陥ると、預金者だけでなく、企業の資金繰り、決済網、金融市場へ影響が連鎖し得る。そのため、銀行には自己資本、流動性、大口与信、リスク管理等について特別な健全性規制が設けられている。

これらの規制は、銀行の破綻を一切なくすことを目的とするものではない。銀行が一定の損失や資金流出に耐え、問題が生じた場合にも金融システムへの波及を抑えることが主な目的である。

A02自己資本と流動性は何が違うのですか?
回答

自己資本は、貸倒れや価格下落等による損失を吸収するための財務上の厚みである。これに対し流動性は、預金払戻しや借入返済等の支払に必要な資金を、必要な時点で用意できる能力である。

十分な自己資本があっても、すぐに使える現金を確保できなければ資金繰りに行き詰まることがある。反対に、当面の現金があっても大きな損失で債務超過になれば健全性は維持できない。このため、自己資本規制と流動性規制は別々に必要となる。

A03銀行が黒字でも、資金繰りに行き詰まることはありますか?
回答

あり得る。損益計算上の黒字は、一定期間の収益が費用を上回ったことを示すが、その時点で支払に使える現金が十分であることまでは意味しない。

例えば、長期貸出や換金しにくい資産を短期の預金・借入で調達している場合、預金流出や市場調達の停止が起きると、資産価値が十分でも直ちに現金化できないことがある。LCRやNSFRは、このような資金繰りと期間構造の弱点を捉えるための規制である。

A04国際統一基準と国内基準は、どのように使い分けられますか?
回答

自己資本比率規制では、海外営業拠点を有する銀行等には国際統一基準が、それ以外の銀行には国内基準が適用されることが基本である。両者は最低比率、自己資本の構成、各種調整等が同一ではない。

流動性比率規制の第1の柱であるLCR・NSFRも、原則として海外営業拠点を有する銀行等が対象となる。したがって、「銀行であれば全て同じ計算を行う」とは限らず、銀行の業態、海外営業拠点の有無、連結・単体の別を先に確認する必要がある。

A05単体規制と連結規制は、単に対象会社の範囲が違うだけですか?
回答

対象範囲の違いが中心であるが、それだけではない。単体規制は銀行自身を、連結規制は銀行と一定の子会社等からなるグループを対象とする。連結ではグループ内取引を消去し、子会社の資産・負債・リスク・資本を所定の範囲で取り込む。

また、子会社が保有する資本や流動資産を親銀行が自由に利用できるとは限らない。少数株主への帰属、現地規制、送金制限等があるため、連結範囲に入ることと、グループ内で資金や損失吸収力を自由に移せることは区別する必要がある。

A06自己資本比率規制、LCR、NSFR、レバレッジ比率は、なぜ併存しているのですか?
回答

一つの指標では、銀行の全ての弱点を捉えられないためである。

  • 自己資本比率規制は、信用リスク、市場リスク、オペレーショナル・リスク等に対して損失吸収力が十分かを見る。
  • LCRは、30日間の流動性ストレスに耐えられるかを見る。
  • NSFRは、概ね1年の時間軸で、資産を安定した資金で調達しているかを見る。
  • レバレッジ比率は、リスク・ウェイトに依存しない単純な総エクスポージャーとの対比で、過度な資産膨張を抑える。

各指標は互いを代替するのではなく、異なる角度から補完している。

A07同じ金融商品でも、規制によって取扱いが異なるのはなぜですか?
回答

規制ごとに測定目的が異なるためである。例えば国債は、自己資本比率規制では発行体の信用リスクを中心に見る一方、LCRではストレス時に換金できるかを、NSFRでは保有に必要な安定調達を、レバレッジ比率では原則としてリスクの低さにかかわらずエクスポージャー額を確認する。

したがって、規制間の違いは矛盾ではない。同じ商品を「損失の可能性」「短期の換金性」「調達期間」「総量」という別の側面から測っている。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S1] [S4] [S6] [S8]

[S1] 金融庁「バーゼル規制関連」
金融庁の資料を見る

[S4] 金融庁「流動性に係る健全性を判断するための基準」
金融庁の資料を見る

[S6] 金融庁「レバレッジに係る健全性を判断するための基準」
金融庁の資料を見る

[S8] Basel Committee on Banking Supervision「Basel Framework」
BCBSの資料を見る

B同じ金融商品・取引を複数の規制から見る

同じ取引を、自己資本・流動性・レバレッジ等の複数の視点から比較する

全15問
B01自己資本比率規制、LCR、NSFR、レバレッジ比率は、それぞれ何を測っているのですか?
回答

自己資本比率規制は「損失に耐えられるか」、LCRは「短期の資金流出に耐えられるか」、NSFRは「資産を安定的に調達しているか」、レバレッジ比率は「リスク評価にかかわらず資産等を膨らませ過ぎていないか」を測る。

同じ残高でも、自己資本比率規制ではリスク・ウェイト、LCRでは30日以内の流出入とHQLA、NSFRでは残存期間・相手方・換金性、レバレッジ比率では原則として総エクスポージャー額が問題となる。

B02貸出金は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように見方が異なりますか?
回答

自己資本比率規制では、借り手、担保、延滞状況、適用手法等に応じて信用リスク・アセットを算定する。LCRでは、30日以内に契約上返済され、かつ全額弁済の見込みが十分高い部分を資金流入として扱う。ただし、相手方等に応じた流入率や資金流入額全体の上限がある。

NSFRでは、貸出の残存期間、相手方、担保、リスク・ウェイト、処分上の制約等に応じてRSFを算定する。長期で換金しにくい貸出ほど、一般に多くの安定調達を必要とする。

B03国債は、自己資本比率規制と流動性比率規制でどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、発行国、通貨、格付、適用手法等に応じて信用リスク・ウェイトを判定する。日本国債が常に全ての規制・通貨で同じ扱いになるわけではない。

LCRでは、所定の要件と運用上の要件を満たす国債はHQLAとなり得る。NSFRでは、HQLAとしての区分、処分上の制約等によりRSFが決まる。一方、レバレッジ比率では、低リスク資産であっても原則としてエクスポージャーに含まれる。信用リスクが低いことと、総量規制の対象外であることは同じではない。

B04社債やCP(コマーシャルペーパー)は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、発行体・格付・残存期間・適用手法等により信用リスク・アセットを算定する。LCRでは、社債やCPという名称だけでは足りず、非劣後性、信用力、市場規模、取引の活発さ、ストレス時の価格下落等の要件を満たす場合に限りレベル2資産となり得る。

NSFRでは、HQLA区分、残存期間、処分上の制約等に応じてRSFが決まる。格付が高くても、市場流動性や自由処分性の要件を満たさなければLCR上のHQLAにはならない。

B05株式は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、株式等エクスポージャーとして、保有目的、上場・非上場、発行体との関係、適用手法等に応じたリスクを認識する。金融機関の資本調達手段を保有する場合には、自己資本からの控除が問題となることもある。

LCRでは、全ての株式がHQLAとなるわけではない。所定の信用・市場流動性・価格下落等の要件を満たす一部の上場株式がレベル2B資産となり得る。NSFRでは、流動資産区分、上場性、処分制約等に応じてRSFを判定し、非上場株式や換金制限の強い持分は一般に高い安定調達を必要とする。

B06投資信託やファンド持分は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのように扱われますか?
回答

自己資本比率規制では、ファンドの裏付資産を確認するルック・スルー方式、運用規約等に基づくマンデート方式等によりリスク・ウェイトを算定する。ファンドの借入等によるレバレッジも反映する。

LCRでは、投資信託・ファンド持分という名称だけでHQLAとはならない。所定の要件を満たす限定的な場合を除き、裏付資産が国債であっても持分自体の換金性・法的構造を確認する必要がある。NSFRでは、持分の区分、換金可能時期、ロックアップ、裏付資産等を踏まえてRSFを判定する。

B07劣後債は、銀行が発行する場合と保有する場合で規制上の意味が異なりますか?
回答

異なる。銀行が発行する劣後債は、契約が所定の劣後性、損失吸収性、最低満期等の要件を満たせばTier2資本となり得る。これは銀行側の損失吸収力を高める方向に働く。

一方、銀行が他の金融機関の劣後債を保有する場合は、保有資産として信用リスクを負い、発行体の資本調達手段に該当すれば自己資本からの控除対象となることもある。LCRでは劣後性のある社債は通常の適格社債と同じには扱われず、NSFRでは保有資産と発行負債を別々の観点で判定する。

B08コミットメントは、まだ融資を実行していなくても各規制の対象になりますか?
回答

対象になり得る。コミットメントは、一定の条件の下で将来資金を供給する約束であり、貸借対照表に貸出金が計上されていなくても潜在的な信用供与・資金流出を生む。

自己資本比率規制とレバレッジ比率では、未使用枠に所定の与信換算率又は掛目を乗じてエクスポージャーを認識する。LCRでは、信用供与枠・流動性供与枠、相手方、取消可能性等に応じて30日間の資金流出を見積もる。NSFRでは、与信・流動性ファシリティの未使用枠に所定のRSFを認識する。

B09担保は、自己資本比率規制、LCR、NSFRでどのような役割を持ちますか?
回答

自己資本比率規制では、適格担保の要件を満たせば、信用リスク削減手法としてエクスポージャー額又はリスク・ウェイトに影響する。LCRでは、担保がHQLAとして利用できるか、差入れにより拘束されているか、受入担保を再使用できるかが重要となる。

NSFRでは、担保の存在だけでなく、資産がどの程度の期間拘束されるかがRSFに影響する。したがって、「担保付きだから有利」と一律にはいえず、担保の種類、時価変動、法的有効性、処分可能性、残存期間の不一致を確認する必要がある。

B10レポ取引は、信用リスクと流動性リスクの両方に影響しますか?
回答

影響する。レポ取引は、有価証券と現金を交換し、将来反対売買又は返還を行う資金調達・運用取引である。担保があっても、相手方の不履行、担保価値の変動、追加担保、再調達等のリスクが残る。

自己資本比率規制とレバレッジ比率では、現金債権・債務、担保、相手方エクスポージャー、相殺要件等を扱う。LCRでは30日以内の満期到来時にどの程度ロールオーバーできるかを担保区分ごとに想定する。NSFRでは現金債権・債務、相手方、残存期間、担保制約等を評価する。

B11デリバティブ取引は、各規制で何が測定対象になりますか?
回答

自己資本比率規制では、取引相手方の信用リスク、将来の潜在的エクスポージャー、CVA(取引相手方の信用力変化による評価額変動)、必要に応じて市場リスクを測る。レバレッジ比率でも再構築コストと将来の潜在的エクスポージャー等を認識する。

LCRでは30日以内の契約上の受払、時価変動に伴う担保、格下げ条項、担保差替え、IM・VM等を資金流出入として見る。NSFRではデリバティブ資産・負債、VM、IM、清算基金等が安定調達の必要額に影響する。

B12残存期間は、自己資本比率規制、LCR、NSFRで同じように使われますか?
回答

同じではない。自己資本比率規制では、債権のリスク評価、信用リスク削減手法の期間不一致、資本調達手段の適格性等で残存期間を用いる。LCRでは、主に30日以内に資金流出入が生じるかを判断する。

NSFRでは、6か月未満、6か月以上1年未満、1年以上等の期間区分が資産・負債の係数に広く影響する。また、コール条項や期限前返済条項がある場合、誰が権利を持つか、市場慣行上の期待があるかによって用いる期日が変わり得る。

B13格付は、自己資本比率規制とHQLAの判定で同じ意味を持ちますか?
回答

同じではない。自己資本比率規制では、格付は主として信用リスク・ウェイトを決める材料の一つである。HQLAの判定では信用力に加え、市場規模、取引の活発さ、価格の透明性、ストレス時の価格下落等も必要となる。

また、利用できる格付の種類、依頼格付であること、複数格付の扱い等にも要件がある。高格付であっても市場で売却しにくい資産はHQLAにならず、反対に格付だけを見て規制間の区分を共通化することも適切ではない。

B14相殺は、自己資本比率規制、LCR、NSFR、レバレッジ比率で同じ条件により認められますか?
回答

同じではない。各規制は、相殺を認める目的と計算対象が異なる。自己資本比率規制では信用リスク・エクスポージャー、LCRでは30日間の資金流出入、NSFRではデリバティブやレポの資産・負債、レバレッジ比率では総エクスポージャーを計算するための要件が定められている。

会計上純額表示されていることだけでは足りず、法的に有効なネッティング契約、同一相手方、同一決済日、同時決済の意図等が求められる場合がある。ある規制で相殺できても、別の規制で当然に相殺できるわけではない。

B15CCPを利用する取引は、各規制でどのような意味を持ちますか?
回答

CCPを利用すると、当初の取引相手方との債権・債務がCCPとの関係に置き換えられ、参加者間の取引を集約できる。適格CCP向け取引には自己資本比率規制上の特別な扱いがある一方、取引証拠金、清算基金、清算参加者との関係等は別途評価される。

LCR・NSFRでは、CCPへの証拠金差入れや追加拠出、清算に伴う資金授受が流動性に影響する。CCPは相手方リスクを消滅させるのではなく、集中管理し、証拠金・清算基金・破綻処理手続等で抑制する仕組みである。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S2] [S3] [S4] [S5] [S6] [S8] [S13]

[S2] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2026年5月22日更新版)
資料を見る

[S3] 金融庁「自己資本比率規制に関するQ&A」(2026年5月25日までの追加・修正を反映)
資料を見る

[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
資料を見る

[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
資料を見る

[S6] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」
資料を見る

[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
資料を見る

[S13] 日本証券クリアリング機構
資料を見る

C自己資本比率規制

自己資本・RWA・資本調達手段・信用リスクの基本論点を整理する

全12問
C01
自己資本比率が高ければ、銀行は必ず安全だといえますか?
回答

必ず安全とはいえない。自己資本比率は重要な健全性指標であるが、計算時点の資本と規制上評価されたリスクの関係を示すものであり、流動性、金利リスク、集中リスク、収益力、ガバナンス等を単独で表すものではない。

また、同じ比率でも、資本の質、リスク・アセットの構成、内部モデルの使用、含み損、将来の損失発生可能性等は異なり得る。安全性は、LCR、NSFR、レバレッジ比率、ストレステスト、開示情報等と合わせて見る必要がある。

C02
自己資本比率の分子と分母には、何が入りますか?
回答

分子には、国際統一基準ではCET1、AT1、Tier2から所定の調整項目を控除した自己資本が入る。国内基準ではコア資本を中心とする別の構成となる。

分母には、信用リスク・アセット、市場リスク相当額及びオペレーショナル・リスク相当額を所定の方法で換算した額等が入る。単純な総資産ではなく、資産・取引のリスクに応じて調整した額である。このため、資産残高が同じでも、構成によって比率は異なる。

C03
CET1、AT1、Tier2は、損失を吸収する場面や方法がどのように異なりますか?
回答

CET1は普通株式や内部留保等からなり、銀行が通常の事業を継続している段階から損失を吸収する中核的な資本である。AT1は永久性、配当・利払の裁量、元本削減又は株式転換等の要件を通じて、破綻前の段階でも損失を吸収するよう設計される。

Tier2は、主に劣後債等からなり、破綻・清算時の損失吸収を補完する。一般にCET1、AT1、Tier2の順に損失吸収力の質が高いと評価されるため、最低所要水準も資本区分ごとに設けられている。

C04
「劣後債」や「優先株式」という名称だけで、自己資本への算入可否は決まりますか?
回答

決まらない。自己資本への算入には、払込済みであること、劣後順位、満期、償還・買戻し、利払・配当の裁量、損失吸収条項、担保や保証の有無等、詳細な要件を満たす必要がある。

同じ名称でも契約条件が異なれば、CET1、AT1、Tier2のいずれに該当するか、又はいずれにも算入できないかが変わる。法的形式や商品名ではなく、契約の実質と告示上の要件を照合することが必要である。

C05
Tier2資本は、満期が近づくと算入額が減るのはなぜですか?
回答

満期が近い資本調達手段は、銀行が将来にわたり損失を吸収できる期間が短くなり、恒久的な資本としての性質が弱まるためである。バーゼル基準では、期限付きTier2は当初満期が5年以上であることが求められ、最終5年間は規制資本への算入額が段階的に減額される。

これは会計上の負債残高が減るという意味ではない。契約上の元本は残っていても、健全性規制上の損失吸収力として認める額を逓減させる仕組みである。

C06
コール日と最終満期日は、Tier2資本の判定でどのように使い分けますか?
回答

コール日は発行銀行が期限前償還を選択できる日、最終満期日は契約上元本を返済する最終日である。両者は同じではない。

Tier2の適格性では、コールが発行後一定期間経過後に限られること、償還等又は買戻しに際して自己資本の充実についてあらかじめ金融庁長官の確認を受けること、コールを強く誘発する条件がないこと等を確認する。残存期間や逓減の判定では契約上の最終満期が基本となるが、他の規制や内部流動性管理では、市場の償還期待やコール条項を別途考慮する場合がある。契約条件と適用する規制を分けて確認する必要がある。

C07
銀行が他の金融機関の株式、AT1またはTier2を保有すると、なぜ自己資本から控除されることがあるのですか?
回答

金融機関同士が互いの資本調達手段を保有すると、金融システム全体では同じ資本が重複して損失吸収力として数えられるおそれがあるためである。また、発行金融機関の損失が保有銀行にも波及し、資本の相互依存を強める。

このため、発行体との関係、保有割合、自行の対応する資本区分等に応じて、CET1、AT1又はTier2から控除する仕組みが設けられている。全ての保有が直ちに全額控除されるわけではなく、告示上の区分・閾値を確認する必要がある。

C08
ファンドを通じて他の金融機関の資本調達手段を保有する場合、ルック・スルー(ファンドの中身を確認する方法)は必要ですか?
回答

必要となる場合がある。直接保有だけを控除対象とすると、ファンドを介在させることで規制を回避できるため、間接保有についても裏付資産を確認する仕組みが設けられている。

実際の取扱いは、ファンドの裏付資産情報をどこまで取得できるか、自己資本比率告示上のルック・スルー方式等の要件を満たすか、金融機関の資本調達手段への投資額を特定できるかによって異なる。情報が不足する場合には、より保守的な扱いとなり得る。

C09
リスク・ウェイトとは何ですか。また、同じ金額の資産でもRWAが異なるのはなぜですか?
回答

リスク・ウェイトは、エクスポージャー額を信用リスク・アセットへ換算するための割合である。例えば、同じ金額の貸出や債券でも、相手方の区分、信用力、担保、延滞、残存期間等が異なれば、損失発生の可能性や回収可能性も異なる。

標準的手法では告示上の区分・格付等に応じたリスク・ウェイトを用い、内部格付手法では銀行が推計するデフォルト確率等を所定の算式に反映する。RWAは単なる残高ではなく、規制上のリスク評価を加えた金額である。

C10
担保や保証があれば、必ず信用リスクを小さく計算できますか?
回答

必ずではない。信用リスク削減効果を認めるには、担保又は保証が告示上の適格要件を満たし、法的に有効で、適時に実行でき、価値を適切に管理できる必要がある。

担保では価格変動、通貨・期間の不一致、相関、再評価頻度等が問題となる。保証では保証人の適格性、保証範囲、直接請求可能性、条件の有無等を確認する。実務上担保価値があっても、規制上の要件を満たさなければRWA削減には使えない。

C11
未使用の融資枠は、貸借対照表に計上されていなくても自己資本比率規制の対象になりますか?
回答

対象となる。未使用枠は現時点では貸出金でなくても、相手方の請求等により将来貸出へ転化し得るため、オフ・バランス取引として信用リスクを認識する。

未使用額にCCF(与信換算率)を乗じて与信相当額を求め、さらに相手方のリスク・ウェイト等を適用する。取消可能性、契約条件、商品の種類等によりCCFは異なるため、「未実行だからゼロ」とは限らない。

C12
不動産担保が付いていれば、貸出のリスク・ウェイトは一律に低くなりますか?
回答

一律には低くならない。居住用不動産向け、事業用不動産向け、ADC(用地取得・開発・建設)向け等で区分が異なり、担保物件の種類、返済原資、LTV(担保価値に対する貸出額の割合)、担保評価、法的実行可能性等を確認する必要がある。

特に、返済が物件の売却・賃貸収入に大きく依存する貸出は、借り手の一般的な返済能力に基づく貸出とリスク特性が異なる。単に抵当権が設定されていることだけで低いリスク・ウェイトを適用できるわけではない。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S1] [S2] [S3] [S8]

[S1] 金融庁「バーゼル規制関連」
資料を見る

[S2] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2026年5月22日更新版)
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[S3] 金融庁「自己資本比率規制に関するQ&A」(2026年5月25日までの追加・修正を反映)
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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DLCRとHQLA

短期流動性ストレスと適格流動資産の考え方を整理する

全10問
D01 LCRは、なぜ30日間のストレスを対象としているのですか?
回答

LCRは、銀行固有の問題と市場全体の混乱が重なる厳しい流動性ストレスを想定し、銀行が自力で対応策を講じるための時間を確保する制度である。30日間は、預金流出、市場調達の縮小、格下げに伴う追加担保、未使用枠の引出し等が同時に起きるシナリオを測る期間として設定されている。

30日を超えれば資金繰りを見なくてよいという意味ではない。中長期の期間構造はNSFRや銀行自身の流動性リスク管理で補完される。

D02 HQLAには、どのような資産が含まれますか?
回答

HQLAには、現金、中央銀行預け金、一定の国債・政府保証債等のレベル1資産、所定の要件を満たす公共部門債、社債、CP、カバード・ボンド等のレベル2A資産、一定の住宅ローン担保証券、社債、上場株式等のレベル2B資産が含まれ得る。

ただし、資産種類だけで決まるものではない。信用力、市場規模、取引の活発さ、ストレス時の価格下落、非劣後性、自由処分性、管理体制等の要件を満たす必要がある。

D03 レベル1、レベル2A、レベル2Bの資産は、何が違うのですか?
回答

主な違いは、ストレス時の換金性と価値の安定性である。レベル1は最も質が高く、原則として掛目なしで算入される。レベル2Aは15%、レベル2Bは資産区分に応じて25%又は50%の掛目が適用される。

また、レベル2資産にはHQLA全体に占める上限があり、レベル2Bにはさらに上限がある。これは、見かけ上の時価全額を現金同等として扱わず、ストレス時の価格下落や市場流動性の低下を織り込むためである。

D04 HQLAに該当する資産であれば、すべてLCRに算入できますか?
回答

できない。資産種類・信用力等からレベル1、2A又は2Bの候補に該当しても、自由処分性、自由移動性、換金を行う運用体制等の運用上の要件を満たす必要がある。

担保差入れ、分別管理、法令・契約上の売却制限、グループ内の送金制限等があれば算入できないことがある。さらに、掛目、レベル2資産の上限、通貨別の流動性ニーズとの関係も考慮される。

D05 「自由に処分できること」と「市場で売却しやすいこと」は、同じ意味ですか?
回答

異なる。市場で売却しやすいことは、取引量、価格透明性、買い手の厚み、ストレス時の価格安定性等の市場流動性を指す。自由に処分できることは、銀行がその資産を担保提供、法令、契約、内部管理等に妨げられず現金化できる状態を指す。

市場性の高い国債でも担保として拘束されていれば自由処分性を欠く。一方、契約上自由でも市場に買い手が乏しければHQLAとしての市場要件を満たさない。両方の確認が必要である。

D06 受け入れた担保は、銀行自身が保有するHQLAとして算入できますか?
回答

条件を満たせば算入できる場合がある。受入担保がHQLAの資産要件を満たし、銀行が再使用又は売却でき、分別管理や契約上の制限がなく、既に第三者へ差し入れていないこと等が必要である。

会計上銀行の資産に計上されていない受入担保であっても、LCRでは自由処分性を有するかが重要となる。ただし、返還義務、相手方の担保差替権、元取引の満期等も含め、二重計上が生じないよう確認する必要がある。

D07 差し入れた担保でも、未使用であればHQLAに算入できますか?
回答

「未使用」の意味によって異なる。資産が担保として差し入れられ、相手方のために拘束されている場合は、通常、自由処分性を欠くためHQLAに算入できない。

一方、担保プールへ登録されていても実際の取引を担保しておらず、銀行がいつでも制約なく引き出して現金化できる部分は、契約・制度上の取扱いを確認した上で算入できる余地がある。名称ではなく、基準日時点の法的・実務的な拘束状態で判断する。

D08 満期保有目的の有価証券は、HQLAに算入できますか?
回答

会計上「満期保有目的」であることだけで直ちに除外されるわけではないが、実際にストレス時に現金化できることが必要である。

売却が法令上可能であっても、売却による会計上の影響、内部方針との不整合、経営上の制約等により実質的に現金化できない場合は、運用上の要件を満たさない可能性がある。会計分類とLCR上の自由処分性は別概念であるが、両者の整合を確認する必要がある。

D09 社債やCPは、どのような場合にレベル2資産となりますか?
回答

所定の信用力を有し、劣後的でなく、市場で広く活発に取引され、公開情報から評価しやすく、過去のストレス時にも価格下落等が一定範囲に収まったものが候補となる。発行体が金融機関等又はその関係会社でないこと等も重要である。

より高い信用力・価格安定性を満たすものはレベル2A、一定範囲のものはレベル2Bとなり得る。銘柄区分、格付、発行体、市場データ、依頼格付の有無等を個別に確認する。

D10 海外子会社が保有するHQLAは、銀行グループ全体のLCRに自由に算入できますか?
回答

自由には算入できない。連結対象の海外子会社が保有する資産であっても、現地規制、送金規制、税制、通貨交換の制約、少数株主の権利等により、親銀行の資金流出に充てられないことがある。

連結LCRでは、当該拠点の純資金流出を超えるHQLAをどこまでグループ内で移動できるかを確認する。資産を連結していることと、流動性を自由に移動できることは別である。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S4] [S5] [S8]

[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
資料を見る

[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
資料を見る

[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
資料を見る

ELCRの資金流出・資金流入

30日間の資金流出入とコミットメント・担保・デリバティブを整理する

全12問
E01 個人預金と法人預金で、LCRの流出率が異なるのはなぜですか?
回答

ストレス時の引出行動が異なると想定されるためである。多数の個人から集めた預金は一般に分散され、預金保険や取引関係によって比較的安定しやすい。一方、大口の法人・金融機関預金は、専門的な資金管理の下で短期間に移動しやすく、一件の引出しが大きい。

ただし、個人預金でも預金保険の対象、取引関係、金利条件等により区分が異なる。法人預金でも、一定の業務に不可欠な適格オペレーショナル預金には別の扱いがある。

E02 通知預金は、通知期間と契約満期のどちらを基準に資金流出を判定しますか?
回答

契約上、預金者が最も早く払戻しを受けられる時点を基礎に判断する。通知を行えば30日以内に払戻し可能である場合は、名目上の満期が先であってもLCRの30日間に流出し得る。

既に通知が行われているか、基準日後に通知できるか、通知撤回の条件、違約金、中途解約の実務等も確認する必要がある。商品名や会計上の満期日だけでなく、預金者が有する払戻請求権の内容が重要である。

E03 キャッシュ・マネジメント、カストディ、清算等に伴う預金は、通常の法人預金と何が違いますか?
回答

これらの業務に伴う預金は、決済、資金集中、証券保管、清算等のサービスを利用するために顧客が銀行へ維持する残高である。サービスの継続に必要で、短期間に他行へ移しにくい部分は、通常の余裕資金より安定的な可能性がある。

LCRでは、契約上・実務上の依存関係、必要残高の推定、過去の流出実績等の要件を満たす部分だけが適格オペレーショナル預金となる。サービスに必要な額を超える余剰残高まで同じ扱いにはできない。

E04 コルレス、カストディ、クリアリング、プライム・ブローカレッジに伴う預金は、どのような場合にオペレーショナル預金となりますか?
回答

顧客が当該業務を利用するために預金を維持する必要があり、銀行を変更すると業務継続に重大な支障又は相応のコストが生じ、ストレス時にも残高が維持される蓋然性が高い場合に候補となる。

業務契約があるだけでは足りない。預金残高とサービス利用の対応、必要額の推定方法、余剰残高の分離、継続的な検証が必要である。なお、他行へ預けるコルレス預け金等の資金流入側の扱いは、受け入れる預金の流出側とは別に判定する。

E05 信用供与枠と流動性供与枠は、LCRでどのように区別されますか?
回答

信用供与枠は、顧客の一般的な資金需要に応じて信用を供与する枠である。流動性供与枠は、CPや証券化商品等の市場調達が困難になった場合に、その償還等を支える目的の枠である。

市場調達の代替となる流動性供与枠は、ストレス時に引き出される可能性が高いため、一般により厳しい流出率が設定される。契約名ではなく、資金使途、引出条件、裏付ける債務、相手方等により区別する。

E06 カードローンの未使用枠は、LCR上のコミットメントに含まれますか?
回答

銀行が顧客の引出要求に応じて資金を供給する契約上の義務を負う部分は、原則として未使用の信用供与枠として対象になり得る。個人向けか事業向けか、取消可能性、審査・承認条件等によって流出率や対象額が変わる。

単に極度額が設定されているだけでなく、銀行が流動性ストレス時に無条件で取消せるか、顧客に引出権があるかを確認する必要がある。自己資本比率規制やレバレッジ比率の取消可能性要件と、LCRの要件が同一とは限らない。

E07 契約上の資金流出と偶発的な資金流出は、どのように区別されますか?
回答

契約上の資金流出は、基準日時点の契約により30日以内の支払時期・金額が確定又は合理的に見積もれるものをいう。偶発的な資金流出は、保証履行、顧客行動、風評対応等の将来事象が起きた場合に支払が生じるものをいう。

ファンド出資を例にすると、既に有効な払込通知があり30日以内の支払義務が確定している額と、未通知の出資約束枠から将来請求される可能性がある額は区別して検討する。二重計上を避けつつ、契約内容と発生条件を確認する。

E08 ファンドへの未使用の出資約束枠と、通知済みのキャピタルコールは、LCRで同じように扱われますか?
回答

同じではない。通知済みのキャピタルコールで30日以内の払込義務が確定している額は、契約に基づく資金流出として捉えるのが基本である。これに対し、未使用の出資約束枠は、まだ払込時期が確定していない潜在的な支払義務であり、偶発事象等としての評価が問題となる。

実際の区分は、契約上の払込義務、通知期間、取消可能性、過去の請求実績、重要性等による。通知済み額を未使用枠にも残したまま二重に認識しないよう、出資約束額、払込済額、通知済未払額を分けて管理する必要がある。

E09 デリバティブの契約上の受払、追加担保、格下げ条項、IM、VMは、LCRでどのように区別されますか?
回答

契約上の受払は、30日以内に予定されるデリバティブのキャッシュフローである。追加担保は、時価変動、担保価値の低下、担保差替え等によって必要となる。格下げ条項は、自行の格付低下に伴う追加担保・期限前支払等を捉える。

VMは現在の時価損益を調整するため、一定の要件の下でデリバティブの受払との相殺が関係する。IMは将来の潜在損失に備えて分別・拘束される性質が強く、VMと同じには扱われない。各項目を契約、担保、ストレス想定ごとに分ける必要がある。

E10 LCRで資金流入額に上限が設けられているのはなぜですか?
回答

将来の貸出回収等だけに依存してHQLAの保有を減らすことを防ぐためである。ストレス時には、相手方の返済遅延、貸出のロールオーバー、取引関係維持のための再貸出等が起こり、予定どおりの流入を全て利用できるとは限らない。

このため、原則として資金流入額は資金流出額の一定割合を上限とし、銀行自身がHQLAを保有することを求める。一部の業態・取引には別の上限又は例外があるため、適用区分の確認が必要である。

E11 30日以内に返済される貸出金は、全額を資金流入として見込めますか?
回答

一律に全額とはならない。契約上30日以内に弁済期が到来し、全額弁済の見込みが十分高く、リボルビング型や期限の定めのない貸出等に該当しないことが必要である。

さらに、相手方が中央銀行・金融機関等か、それ以外かによって資金流入率が異なる。貸出を回収した直後に同額を再貸出する契約上の義務がある場合等は、資金提供義務との関係も確認する。元本、利息、延滞、相手方を分けて判定する必要がある。

E12 HQLAに算入する資産の30日以内の償還額を、資金流入にも重ねて計上できますか?
回答

できない。HQLAである有価証券の30日以内の償還は、その資産が現金へ形を変えるだけであり、HQLAと資金流入の双方に計上すると同じ流動性を二重に評価することになる。

このため、LCRでは適格流動資産の有価証券償還に係る資金流入率は0%とされる。HQLAでない有価証券の確実な償還は、所定の要件の下で資金流入となり得る。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S4] [S5] [S8]

[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
資料を見る

[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
資料を見る

[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
資料を見る

FNSFR

安定調達と資産・負債の期間構造を整理する

全10問
F01 NSFRは、LCRと何が違うのですか?
回答

LCRは30日間の厳しい資金流出に備える短期の指標である。NSFRは概ね1年の時間軸で、長期・換金困難な資産を、資本、長期負債、安定的な預金等でどの程度調達しているかを見る構造的な指標である。

LCRが十分でも、短期調達に過度に依存して長期資産を保有していれば、調達の借換えが続かないリスクがある。NSFRはこの期間の不一致を抑える役割を持つ。

F02 ASFとRSFは、何を表しているのですか?
回答

ASFは、資本・負債のうち、概ね1年の時間軸で安定的に利用できると評価される調達額である。資本、長期負債、安定的な個人預金等には高い算入率が適用される。

RSFは、資産・オフ・バランス取引等を維持するために必要と評価される安定調達額である。換金しやすい資産には低い率、長期貸出、非流動資産、拘束資産等には高い率が適用される。NSFRはASFをRSFで割り、100%以上とすることを求める。

F03 同じ負債でも、預金者の属性や残存期間によってASF係数が異なるのはなぜですか?
回答

ストレス時や市場環境の変化時に、調達がどの程度維持されるかが異なるためである。満期が長い負債は1年間利用できる可能性が高く、多数の個人から集めた安定預金も大口の短期市場調達より安定しやすいと評価される。

反対に、金融機関からの短期調達や期限の短い市場性調達は、満期時に更新されない可能性が高い。預金者属性、預金保険、取引関係、残存期間等を組み合わせてASF係数が設定される。

F04 満期まで1年未満となった負債は、NSFR上の安定調達として扱われますか?
回答

一部は安定調達として扱われるが、通常、1年以上の負債と同じ100%のASFになるとは限らない。6か月以上1年未満、6か月未満等の期間区分と、相手方・負債種類に応じて係数が決まる。

個人の安定預金等は短期でも高いASFとなる一方、金融機関からの短期調達は低い又は0%となり得る。残存期間だけでなく、誰からどのように調達した資金かを確認する必要がある。

F05 Tier2資本のうち残存期間が1年未満の部分は、なぜ100%のASFとして扱われないのですか?
回答

1年以内に償還される部分は、NSFRの時間軸である1年間を通じて利用できる安定調達ではないためである。Tier2として自己資本比率の分子に一部算入されていても、NSFRでは調達が残る期間を別の目的で評価する。

金融庁告示では、Tier2資本の基礎項目から基準日後1年以内に弁済期が到来する額を控除した部分を、100%ASFの対象としている。同じ資本調達手段でも、損失吸収力と調達期間では評価軸が異なる。

F06 貸出金のRSFは、残存期間、相手方、担保によってどのように変わりますか?
回答

短期で換金・回収可能な貸出は比較的低いRSFとなり、長期貸出はより高いRSFとなる。金融機関向けか非金融機関向けか、残存期間が6か月未満、6か月以上1年未満、1年以上のいずれかも重要である。

1年以上の非金融機関向け貸出では、一定の低いリスク・ウェイト要件を満たす場合と、それを超える場合で係数が異なる。担保があるだけで決まらず、処分上の制約、弁済可能性、住宅ローン該当性等も確認する。

F07 HQLAは、NSFRでも常に低いRSF係数となりますか?
回答

常にではない。処分上の制約がないレベル1、2A、2B資産は、その流動性に応じて比較的低いRSFとなるが、担保差入れ等により長期間拘束されていれば高いRSFが適用され得る。

また、LCR上のHQLA区分とNSFR上の残存期間・相手方・処分制約は別の判定軸である。HQLAという属性だけでNSFRの係数を固定せず、基準日時点の拘束状態等を確認する必要がある。

F08 担保として拘束されている資産は、NSFRでどのように扱われますか?
回答

資産が処分できない期間に応じてRSFが調整される。拘束期間が1年以上の資産は、原則として100%のRSFとなる。6か月以上1年未満の拘束には、元の資産区分との関係で所定の扱いがある。

短期の拘束は必ずしも元の係数を変えないが、実質的に更新が繰り返され長期拘束となる場合等は事実関係の確認が必要である。担保差入れの有無だけでなく、いつ自由に処分できるようになるかが重要である。

F09 コミットメント等のオフ・バランス取引は、NSFRでなぜ所要安定調達の対象となるのですか?
回答

未使用枠が将来引き出されると、銀行は貸出等の資産を増やすための資金を用意する必要があるからである。現在の貸借対照表に資産がなくても、契約上の潜在的な資金需要を無視すると、必要な安定調達を過小評価する。

このため、与信・流動性ファシリティの未使用枠には原則として5%のRSFが適用される。取消可能な枠、保証、その他の偶発事象には別の取扱いがあり、契約の実質に応じて区分する。

F10 ファンド持分のロックアップ期間や換金制限は、NSFRの判定にどのように影響しますか?
回答

まず、ファンド持分自体が告示第91条から第97条までのどの資産区分に該当するかを判定し、処分上の制約がない場合のRSF算入率を決める。ファンドの裏付資産の流動性や持分の解約頻度等だけから、RSF算入率を直接決めるものではない。

そのうえで、ロックアップ、解約通知期間、ゲート条項等により持分が処分上制約のある資産に該当する場合は、第98条を適用する。処分上の制約が1年以上続く資産には100%、6か月以上1年未満では、制約がない場合の算入率が50%以下なら50%、50%を超えるなら元の算入率を適用する。制約期間が6か月未満なら元の算入率を適用する。裏付資産の流動性と、銀行が保有する持分自体を自由に処分できるかは区別して確認する必要がある。

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[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
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[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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Gレバレッジ比率・決済途上取引

非リスクベースの総量規制と決済途上取引の論点を整理する

全8問
G01 レバレッジ比率は、自己資本比率をどのように補完するのですか?
回答

自己資本比率は、資産等のリスクの大きさに応じた「リスク・アセット」を分母とする。これに対し、レバレッジ比率は、原則としてリスク・ウェイトを使わず、資産、デリバティブ、証券金融取引、オフ・バランス取引等から算出するエクスポージャー額を分母とする。

このためレバレッジ比率は、低いリスク・ウェイトの取引が大量に積み上がることや、リスク測定の誤差によって自己資本比率だけでは捉えにくい過度な借入依存を抑える補完指標となる。二つの比率はどちらか一方で代替できるものではない。

G02 レバレッジ比率では、なぜ原則としてリスク・ウェイトを使わないのですか?
回答

リスク・ウェイトに依存しない単純な測定軸を設け、自己資本比率とは異なる角度から銀行の規模と自己資本の関係を見るためである。内部モデルや外部格付けの違い、将来のリスク変化を完全には見通せないこと等を踏まえ、低リスクと評価された資産の急拡大にも歯止めをかける。

ただし、レバレッジ比率も単純な貸借対照表合計を使うわけではない。デリバティブ、レポ等の証券金融取引、未使用のコミットメント等について、告示上の換算・調整を行う必要がある。

G03 貸借対照表上の資産額と、レバレッジ比率のエクスポージャー額は同じですか?
回答

同じではない。貸借対照表上の資産を出発点とする部分はあるが、会計上の相殺が規制上そのまま認められるとは限らず、自己資本から控除した項目等について調整も行う。

さらに、デリバティブの将来の価格変動に備える額、レポ等の証券金融取引の相手方信用リスク、保証・コミットメント等のオフ・バランス取引も加わる。財務諸表の数字だけで最終的な分母を判断することはできない。

G04 デリバティブ取引は、レバレッジ比率でどのようにエクスポージャーへ換算されますか?
回答

デリバティブは、現在の時価に基づく再構築コストと、将来の価格変動に備える潜在的なエクスポージャーを組み合わせて算定する。再構築コストとは、相手方が直ちに債務不履行となった場合に同等の取引を再度行うための費用である。

適格な変動証拠金、法的に有効な一括清算契約、中央清算機関との取引等には所定の調整がある。ただし、会計上の純額表示や担保の授受があるだけで自動的に純額となるわけではなく、告示の要件を取引単位で確認する必要がある。

G05 レポ等の証券金融取引は、レバレッジ比率でどのように扱われますか?
回答

レポ等の証券金融取引では、会計上認識する資産額に加え、受け取った証券等の価値が相手方への資金提供額を下回る可能性等を反映した相手方信用リスクを算定する。レポは、証券を担保に資金を貸し借りする経済効果を持つ取引である。

同じ相手方との複数取引を相殺できるのは、同一の法的に有効な契約、同じ最終決済日、債務不履行時の一括清算可能性等の要件を満たす場合に限られる。担保があるという理由だけでエクスポージャーがゼロになるわけではない。

G06 未使用のコミットメントは、レバレッジ比率にも含まれますか?
回答

含まれる。コミットメントとは、一定の条件の下で将来の貸出や資金提供を約束する契約である。まだ貸し出されていなくても、相手方が枠を利用すれば銀行のエクスポージャーとなるため、未使用額に所定の掛目を乗じてオフ・バランス取引として算入する。

掛目は、契約の種類、取消可能性、満期等によって異なる。一方的かつ無条件に取り消せるとされる枠も、契約文言だけでなく、実務上本当に取り消せるかを含めて判定する必要がある。

G07 決済途上の受取債権と支払債務は、どのような場合に相殺できますか?
回答

すべての決済途上取引を自由に相殺できるわけではない。一般に、同一の最終決済日であること、相殺が法的に有効であること、純額決済又は実質的に同時決済となる仕組みがあること、決済を完了できる運用体制があること等の要件を確認する。

また、証券金融取引の相殺と、通常の売買に伴う決済債権・債務の扱いは規定が異なり得る。会計上の表示、決済機関の仕組み、契約、決済日、通貨を照合し、適用する告示条文を特定する必要がある。

G08 DVP決済であれば、決済途上取引を必ず純額で計上できますか?
回答

必ずではない。DVP(Delivery Versus Payment)決済とは、証券の引渡しと代金の支払いを相互に条件付け、一方だけが実行される元本リスクを減らす仕組みである。DVPは同時決済の事実を裏付ける重要な要素だが、それだけで規制上の相殺要件をすべて満たすとは限らない。

純額計上の可否は、法的な相殺可能性、同一決済日、決済システムの設計、日中信用の扱い、決済失敗時の処理等も含めて判断する。DVPであることと、会計又はレバレッジ比率上の純額表示は分けて確認すべきである。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S6] [S7] [S8] [S12]

[S6] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」
資料を見る

[S7] 金融庁「レバレッジ比率規制に関するQ&A」
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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[S12] 証券保管振替機構「DVP決済の概要」
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Hデリバティブ・レポ・担保・CCP

市場取引・証拠金・担保・中央清算の実務論点を整理する

全8問
H01 上場デリバティブ取引と店頭デリバティブ取引は、何が違うのですか?
回答

上場デリバティブは、取引所が定めた標準的な商品を市場で売買し、取引所価格が公表され、通常は中央清算機関を通じて清算する。店頭デリバティブは、金融機関と顧客等が相対で条件を合意するため、金額、満期、参照指標等を個別の目的に合わせやすい。

店頭取引でも、標準化された商品は中央清算の対象となることがあり、証拠金規制も適用され得る。一方、上場取引にも市場ごとの商品・証拠金・清算規則があるため、「上場か店頭か」だけでリスクや規制上の扱いを決めることはできない。

H02 株価指数先物等の上場取引は、すべてCCPを通じて清算されますか?
回答

CCP(Central Counterparty、中央清算機関)は、売り手と買い手の間に入り、双方の相手方となって清算を行う機関である。主要な取引所デリバティブはCCP清算を利用するのが一般的だが、世界中のすべての商品・市場に一律の仕組みがあるわけではない。

実際の判定では、取引所名、商品、清算規則、清算参加者、顧客取引か自己取引かを確認する。日本の取引所デリバティブについても、商品ごとに日本証券クリアリング機構等の規則を確認する必要がある。

H03 CCPを利用すると、取引相手方の信用リスクはなくなりますか?
回答

なくならない。CCPが取引の間に入ることで、相対取引の相手方リスクはCCP又は清算参加者に対するリスクへ置き換わる。日々の値洗い、証拠金、参加者の財務要件、共同の損失負担制度等によってリスクは管理されるが、ゼロにはならない。

参加者の破綻、CCPへのリスク集中、追加証拠金による資金需要、運用障害、破綻処理等も考慮が必要である。自己資本比率規制では、適格CCPかどうかや、取引エクスポージャーと清算基金への拠出を区別して扱う。

H04 IMとVMは、目的と規制上の扱いがどのように異なりますか?
回答

IM(Initial Margin、当初証拠金)は、相手方が債務不履行となってから取引を終了・再構築するまでの将来の価格変動に備える担保である。VM(Variation Margin、変動証拠金)は、日々の時価変動によって既に生じた含み損益を精算する担保である。

IMは分別管理され、自由に再使用できないことが多く、差し入れた資産の流動性やNSFR上の拘束期間に影響する。VMは一定の要件を満たせばデリバティブの現在エクスポージャーを減額できる場合がある。名称ではなく、契約、授受頻度、通貨、換金性、再使用権等を確認する。

H05 CSAがある取引では、デリバティブの受払と担保授受を常に相殺できますか?
回答

常に相殺できるわけではない。CSA(Credit Support Annex、担保契約の付属書)は、デリバティブ取引で授受する担保の種類、計算、移転、返還等を定める。CSAがあっても、元のデリバティブ債権・債務と担保返還義務は法的性質や決済時期が異なり得る。

相殺には、法的に有効な一括清算契約、対象取引の範囲、同一通貨、決済頻度、担保の適格性等、各規制の要件がある。会計上の相殺、自己資本比率規制上の信用リスク削減、レバレッジ比率上の減額、LCR上の資金流出入はそれぞれ別に判定する。

H06 レポと現先取引は、法形式が違っても経済的には同じ取引ですか?
回答

いずれも証券と資金を一定期間交換し、満期時に反対取引を行うため、経済的には証券担保金融に近い機能を持つ。ただし、担保権を設定する方式か、証券の所有権を移転する売買方式か等、契約と法形式には違いがある。

法形式の違いは、倒産時の権利、配当・利息相当額の扱い、会計、税務、担保の再使用、規制上の相殺要件に影響し得る。「経済効果が似ている」ことと「すべて同じ処理ができる」ことを区別する必要がある。

H07 外貨を含むクロスカレンシー・レポでは、どの通貨の資金流出入として扱いますか?
回答

取引名や担保証券の表示通貨だけで決めず、開始時と満期時に実際に受け払いする現金の通貨ごとに把握する。例えば、円建て証券を担保に米ドルを調達する取引では、資金調達の流出入は米ドルを中心に認識し、担保証券は円資産として別に評価する。

LCRでは通貨別の流動性も確認し、満期時の元利金、担保の時価変動、追加担保、為替ヘッジの決済を同じ時間軸で並べる。報告通貨への換算と、実際に必要となる決済通貨の管理は別の作業である。

H08 受け入れた担保を再使用できることは、自己資本比率規制や流動性比率規制にどのような影響を与えますか?
回答

再使用とは、受け入れた担保を第三者への担保差入れや売却等に利用することである。自由に処分でき、法的・運用上の制約がなく、その他の要件も満たす資産は、LCR上のHQLAとして利用できる場合がある。一方、分別管理や返還義務によって実際には使えない資産は、単に保有しているだけでは流動性源といえない。

自己資本比率規制では、担保の適格性、価格変動、保有期間、通貨不一致等を満たす場合に信用リスクを減らせる。再使用すると、担保返還時の買戻しや代替調達、追加担保の資金需要も生じるため、効果と新たな義務を両方計上する必要がある。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S2] [S4] [S5] [S6] [S7] [S8] [S13]

[S2] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2026年5月22日更新版)
資料を見る

[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
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[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
資料を見る

[S6] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」
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[S7] 金融庁「レバレッジ比率規制に関するQ&A」
資料を見る

[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
資料を見る

[S13] 日本証券クリアリング機構
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Iファンド・投資信託・有価証券

ファンドの法形式・出資・分配・各規制上の扱いを整理する

全12問
I01 銀行によるファンドへの出資は、投資信託の購入と同じですか?
回答

必ずしも同じではない。「ファンド」は共同で集めた資金を運用する仕組みの総称であり、投資信託のほか、投資法人、会社、組合等の法形式がある。投資信託は、信託財産を運用し、投資家が受益権を保有する法的な仕組みである。

銀行が取得するものは、投資信託の受益権、投資法人の投資口、組合の持分等で異なる。払込義務、有限責任性、換金方法、分配、議決権、会計・規制上の扱いは法形式と契約に基づいて確認する必要がある。

I02 投資ファンドとヘッジファンドは、どのような点が異なりますか?
回答

投資ファンドは、複数の投資家から集めた資金を一定の方針で運用する仕組み全般を指す。ヘッジファンドはその一類型として使われる呼称で、空売り、デリバティブ、借入れ、相対価値取引等を活用し、市場全体の方向にかかわらず収益を目指す戦略を採ることが多い。

ただし「ヘッジファンド」に世界共通の単一な法形式や定義があるわけではない。投資対象、レバレッジ、解約制限、評価頻度、情報開示、投資家資格等を個別に確認することが重要である。

I03 機関投資家が出資していることは、ファンドの安全性を判断する材料になりますか?
回答

一つの参考情報にはなるが、それだけで安全性が高いとは判断できない。年金基金、保険会社、銀行、公的な運用機関等の機関投資家であっても、適用される法令、運用方針、許容するリスク、必要とする流動性、投資期間はそれぞれ異なる。機関投資家が出資しているという事実は、ファンドの元本保全や将来収益を保証するものではない。

判断では、ファンドの法形式、運用戦略、裏付資産、レバレッジ(借入れ等によって投資額を拡大する仕組み)、換金制限、評価方法、通貨、担保、取引相手方、ガバナンス(運営・監督の仕組み)等を個別に確認する必要がある。システム上も「機関投資家が参加している」という情報だけで区分を決めず、ファンド、持分、契約、出資約束額、払込額、保有残高、換金条件等を別の管理項目として保持し、リスク管理、会計処理、規制計算へつなげることが重要である。

I04 「ユーロ建てファンド」とは、出資通貨、基準価額の表示通貨、投資先資産の通貨のどれを意味しますか?
回答

「ユーロ建て」という表現だけでは一つに決まらない。申込みと払込みを行う通貨、基準価額を表示する通貨、分配・償還を受ける通貨、ファンドの会計上の基準通貨、投資先資産が生み出す通貨は、それぞれ異なる場合がある。

また、為替ヘッジ付きのクラスかどうかによって、投資家が負う為替リスクも変わる。目論見書、契約、運用報告書で各通貨を分けて確認し、「ユーロ表示だから投資先もすべてユーロ資産である」とは考えないことが重要である。

I05 キャピタルコール方式と申込時一括払込方式は、なぜ使い分けられるのですか?
回答

キャピタルコール方式は、投資家が出資上限を約束し、ファンドが投資や費用のために必要となった時点で払込みを請求する方式である。投資時期が不確定な未上場株式、インフラ、不動産等のファンドでは、資金を長期間遊ばせずに済む利点がある。

一括払込方式は、申込時に資金を受け取り、流動性の高い資産へ速やかに投資する公募投資信託等に適している。キャピタルコール方式には将来の資金手当てと払込不履行の管理、一括方式には投資開始までの待機資金管理という異なる課題がある。

I06 出資約束額、未使用の出資約束枠、通知済みのキャピタルコール、払込済み持分は、どのように区別しますか?
回答

出資約束額は、投資家が契約上払い込むことを約束した上限額である。未使用の出資約束枠は、そのうちまだ請求・払込みに充てられていない部分であり、将来の潜在的な資金需要を表す。

通知済みのキャピタルコールは、運営者が払込額と期限を確定して請求したが、基準日時点では未払いの金額である。払込済み持分は、実際に拠出し、ファンド持分として認識された投資である。契約によっては分配金を再度請求できるリコール可能額もあるため、単純な差額だけで残額を管理しない。

I07 ファンドからの分配と持分の償還は、同じものですか?
回答

同じではない。分配は、運用益、配当・利息、売却代金、出資元本の返還等を投資家へ支払う行為であり、支払い後も持分が残ることがある。償還は、満期、解約、清算等によって持分の全部又は一部を消滅・減少させ、その対価を支払う行為である。

同じ現金受取りでも、利益分配か元本返還か、持分口数が減るか、再投資や再請求の対象となるかで会計・税務・流動性の扱いが変わり得る。支払通知と契約上の根拠を確認する必要がある。

I08 将来予定されるファンド分配を、LCRの資金流入として見込めますか?
回答

運用者の裁量、将来の売却、運用成績等に左右される予想分配は、確実な資金流入として先取りしない。LCRで算入するには、原則として30日以内に契約上受け取る債権があり、相手方からの支払いが見込まれ、二重計上がないこと等を確認する必要がある。

支払決定済みでも、取消条件、支払期限、通貨、相手方、延滞の有無を確認する。また、LCRには資金流入総額に上限があるため、個別の流入が適格でも、その全額が最終的な比率改善につながるとは限らない。

I09 ファンド持分は、NSFRでどのような点を確認してRSFを判定しますか?
回答

まず、持分の法的形式、HQLA該当性、上場性、残存期間、解約頻度、解約通知期間、ロックアップ、ゲート条項、譲渡制限、担保差入れによる拘束を確認する。RSFは、持分をどの程度速やかかつ確実に現金化できるかを反映するためである。

裏付資産の情報も重要だが、裏付資産が流動的であるだけで持分自体の換金制限が消えるわけではない。換金困難な非上場持分や長期拘束された持分には高いRSFが適用され得るため、名称ではなく告示上の資産区分に当てはめる。

I10 ファンドを通じた間接保有は、自己資本比率規制でどこまで中身を確認する必要がありますか?
回答

ファンド向け出資の信用リスク・アセットは、十分で信頼できる裏付資産情報が得られる場合、原則としてルック・スルー方式により中の資産を確認して算定する。ルック・スルーとは、ファンド持分を一つの資産として見るのではなく、実質的な投資先へ分解して評価する方法である。

必要な情報が得られない場合は、運用基準に基づく方式や、より保守的な方式を用いる。レバレッジの把握、情報の更新頻度、第三者による検証、銀行自身の保有比率等も確認する。金融機関の資本性商品等に間接投資している場合には、資本控除の検討も別途必要となる。

I11 投資信託またはファンド持分そのものが、HQLAとなることはありますか?
回答

一般の投資信託や私募ファンドの持分が、裏付資産に国債を含むという理由だけで、そのままHQLAになるわけではない。HQLAは、告示に列挙された資産区分に該当し、信用力、市場流動性、換金実績、処分上の制約がないこと等の要件を持分そのものが満たす必要がある。

上場されている持分であっても、それだけでは足りない。法的形式、発行体、リスク・ウェイト、取引市場、価格下落実績、担保利用可能性等を確認し、該当根拠を示せない場合はHQLAに算入しないという保守的な判断が必要である。

I12 外貨建てファンドへの出資では、信用リスク、流動性リスク、為替リスクをどのように分けて考えますか?
回答

信用リスクは、裏付資産の価値低下、取引相手方の債務不履行、ファンドのレバレッジ等による損失可能性である。流動性リスクは、解約制限、キャピタルコール、分配時期、担保差入れ等によって必要な通貨を必要な時に調達できない可能性である。

為替リスクは、持分の基準通貨、払込・分配通貨、裏付資産の通貨と銀行の基準通貨との変動から生じる。為替ヘッジを行っても、ヘッジ相手方の信用リスク、証拠金の流動性リスク、ヘッジのずれは残り得る。三つを分けて測定した上で、相互作用も確認する。

このカテゴリーの主な根拠資料
章の主な根拠資料: [S2] [S3] [S4] [S5] [S8] [S14] [S15] [S17]

[S2] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2026年5月22日更新版)
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[S3] 金融庁「自己資本比率規制に関するQ&A」(2026年5月25日までの追加・修正を反映)
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[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
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[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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[S14] 経済産業省「投資事業有限責任組合契約に関するモデル契約(2025年版)」
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[S15] 資産運用業協会「投資信託を学ぼう」
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[S17] 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「オルタナティブ資産への投資」
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J信託・銀行業務・市場インフラ

信託勘定・銀行業務・決済インフラの基礎を整理する

全6問
J01 銀行勘定と信託勘定は、誰の財産を管理するかという点で何が違いますか?
回答

銀行勘定では、預金として受け入れた金銭は銀行の財産となり、預金者は銀行に対する払戻請求権を持つ。銀行は貸出等を自らの計算で行い、その損益と信用リスクを負う。

信託勘定では、受託者が委託者から託された財産を、契約で定めた受益者のために管理・処分する。信託財産は受託者自身の固有財産と分別して管理される。銀行勘定と信託勘定の間の取引も、外部取引と同様に条件と残高を明確に区分する必要がある。

J02 元本補塡契約のある信託は、通常の信託とどのように異なりますか?
回答

通常の信託では、原則として信託財産の運用成果は受益者に帰属し、受託者は元本の損失を当然には補塡しない。元本補塡契約のある信託では、法令上認められる範囲で、信託終了時等の元本不足を受託者が補う契約を結ぶ。

この契約により受託銀行は信託財産の損失を負担する可能性があり、通常の信託より銀行自身の信用・流動性との結び付きが強い。NSFR等では、対象となる元本補塡契約付き信託について、銀行勘定と信託勘定の内部取引を消去し、外部との資産・負債を所定の方法で算入する。

J03 信託銀行以外の銀行も、信託業務を行うことがありますか?
回答

ある。日本では、銀行その他の金融機関が「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づく認可を受け、信託業務を兼営する仕組みがある。商号に「信託銀行」と入っているかどうかだけで、取扱業務の範囲を判断することはできない。

反対に、信託会社は信託業を営むが、銀行免許がなければ預金受入れ等の銀行業を行うものではない。業務の確認では、免許・認可、信託の種類、契約主体を確認する必要がある。

J04 コルレス、カストディ、クリアリング、キャッシュ・マネジメントが組み合わされる場合、契約・口座・取引をどのように管理しますか?
回答

一つの顧客関係の中で複数のサービスが提供される場合でも、すべてを一つの業務区分や口座へまとめるのは適切ではない。コルレスでは銀行間口座と送金・決済指図、カストディでは証券口座と保有残高・権利処理、クリアリングでは取引、相殺後の債権・債務、証拠金、決済指図、キャッシュ・マネジメントでは企業グループの口座、入出金、資金集中、支払指図を、それぞれの契約と役割に対応させて管理する必要がある。

システム上は、契約主体、顧客・相手方、サービス種別、口座、通貨、証券、取引、決済市場、清算機関、保管先、手数料、締切時刻、処理状態を別の管理項目として保持し、必要な関係だけを関連付ける。受け付けた指図から清算、資金・証券の決済、残高更新、手数料計上までを追跡できるようにし、サービス間で同じ残高や取引を重複計上しないことが重要である。

J05 DVP決済は、証券取引の決済リスクをどのように減らしますか?
回答

DVPは、証券の引渡しが行われる場合に限って代金を支払い、代金が支払われる場合に限って証券を引き渡す仕組みである。これにより、代金だけを支払って証券を受け取れない、又は証券だけを渡して代金を受け取れないという元本リスクを減らす。

ただし、相手方が決済できず取引をやり直す再構築コスト、決済時刻までの資金・証券の手当て、日中流動性、システム障害等のリスクは残る。DVPは決済リスクを大きく減らす仕組みであるが、取引損失や流動性リスクをすべてなくすものではない。

J06 上場商品と店頭商品は、商品名だけで区分できますか?
回答

商品名だけでは区分できない。同じ原資産や経済的な効果を持つ取引でも、取引所で成立する場合と、当事者間の相対契約として成立する場合がある。また、店頭取引であっても、中央清算機関(CCP:売り手と買い手の間に入り、双方の相手方となって清算する機関)を利用することがあるため、「店頭取引は相対清算、上場取引は中央清算」と一律には判断できない。

システムでは、商品種別とは別に、取引場所、契約形態、標準化された契約かどうか、清算方法、清算機関、証拠金・担保契約、決済方法を管理する必要がある。一つの「上場・店頭区分」だけから、価格評価、相手方、証拠金、会計処理、リスク計測、規制計算を自動的に決めず、それぞれの処理目的に必要な条件を確認することが重要である。

このカテゴリーの主な根拠資料
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[S4] 金融庁「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその経営の健全性を判断するための基準として定める流動性に係る健全性を判断するための基準」
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[S5] 金融庁「流動性比率規制に関するQ&A」
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[S8] バーゼル銀行監督委員会「Basel Framework」
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[S9] 金融庁「元本補塡契約のある信託勘定に係る流動性比率規制Q&A」
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[S10] 金融庁「信託会社等に関する総合的な監督指針」
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[S11] e-Gov法令検索「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」(参照日:2026年8月12日)
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[S12] 証券保管振替機構「DVP決済の概要」
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[S13] 日本証券クリアリング機構
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[S16] 信託協会「信託について」
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