金融知識ページを「作る」より「整える」方が大変だった話
AddWisteria Labの「金融知識」ページを、ここしばらくかなり大きく改修していました。
新しいページを追加するというより、これまで作ってきたページを一度まとめて見直す作業です。
やり始める前は、文章を少し直して、足りない説明を追加して、見た目をそろえればいいくらいに考えていました。
でも実際には、思っていたよりずっと大変でした。
一つのページだけを見るとそれなりに読めるのに、サイト全体で見ると、文章の硬さ、説明の深さ、図の使い方、ページの構成などが少しずつ違っていました。
ページを増やすことと、たくさんのページを一つのサイトとして読みやすくすることは、かなり違う作業なのだと思います。
金融系SE向けなのに、読むのがつらい
最初に気になったのは、内容以前に「これを最後まで読み進めるのは結構つらいな」ということでした。
金融の説明なので専門用語はどうしても多くなります。
さらに、取引の仕組み、会計、決済、リスク、規制、システム上の扱いまで書こうとすると、一つの文章に情報を詰め込みやすくなります。
内容として間違っていなくても、硬い文章がずっと続くと、読む側にはかなり負担があります。
そこで今回は、単に文章を短くするのではなく、どの順番なら読み進めやすいかをかなり意識して直しました。
最初に全体像をつかむ。次に最低限知っておきたいことを読む。その後で詳しい説明へ進む。
途中には「ポイント」や「SE視点」を置き、説明本文とは少し役割を分けました。
文体も、全部を同じにするのをやめました。
商品の仕組みや計算条件などは「である調」を基本にしていますが、「読み方」「ポイント」「SE視点」のように読んでいる人へ直接伝えたいところは「です・ます調」にしています。
最初は文体が混ざるのはよくないと思っていたのですが、実際に何ページも続けて読んでみると、すべてを硬い文章にそろえる方が読みづらく感じました。
統一することと、読みやすくすることは必ずしも同じではない。
この調整は思った以上に難しかったです。
商品によって説明のレベルが違いすぎた
もう一つ大きく気になったのが、商品ごとの説明の深さでした。
ある商品はかなり詳しく書いてあるのに、別の商品は概要だけで終わっている。
一つずつページを作っていると気付きにくいのですが、金融商品・銀行業務のページをまとめて並べると、かなり差がありました。
特に大変だったのが短期金融市場です。
以前は、短期金融市場という一つのページの中で複数の商品を説明していました。
でも見直してみると、レポについてはかなり詳しいページがある一方で、コール、譲渡性預金(CD)、コマーシャル・ペーパー(CP)、国庫短期証券などは説明量が少なく、全体として少しアンバランスでした。
そこで、短期金融市場を全体像を説明する親ページにして、それぞれの商品を個別ページへ分けました。
ところが、ページを分けたら終わりではありません。
コールなら、期間、担保の有無、取引経路。
CDなら、預金であること、自行が発行する場合と他行発行分を保有する場合の違い。
CPなら、短期社債としての位置付けやバックアップライン。
レポなら、現先と債券貸借、GC・SC、ヘアカット、マージン、担保差替え。
一つ詳しくすると、今度は隣の商品が薄く見えます。
それを直すと、さらに別の商品が気になります。
ページ単体を詳しくするより、商品間のレベル感をそろえる方がずっと大変でした。
一か所直すと、別のところが気になる
内容以外にも、全体を見直すと細かい違いがかなりありました。
- ページによって冒頭の構成が違う
- 見出しの見え方が違う
- リンクに下線があったりなかったりする
- マウスを乗せたときの動きが違う
- 図番号の付け方が違う
- 同じような説明なのに「ポイント」の位置が違う
- 前後のページへの移動方法が違う
どれも一つだけなら大した問題ではありません。
でも、それが何十ページも積み重なると、サイトとしてはかなりバラバラに見えます。
そこで、ページの基本的な読み順、見出し、リンク、ボタン、図、右側のナビゲーションなどについて共通ルールを決めました。
ただし、これも全部を同じ形にすればいいわけではありません。
商品の説明と規制の説明では、読みやすい構成が違います。
処理フローを見せた方が分かりやすいページもあれば、最初に比較表を見た方が理解しやすいページもあります。
図についても、全体のイメージを見せたいときと、システムの処理やデータの流れを正確に見せたいときでは、使う図の種類を変えた方が分かりやすいことが分かってきました。
何を統一して、何をページごとに変えるのか。
結局、この線引きを決めるのにかなり時間がかかりました。
用語集がどんどん大きくなった
ページを見直している途中で、用語集もかなり気になりました。
本文には普通に出てくるのに、用語集には載っていない言葉が思った以上にありました。
しかも、金融系SEが仕事で出会うのは、教科書に載っている金融用語だけではありません。
仕様書、データ項目、画面、バッチ処理、会議などでは、業務用語とシステム用語が混ざって出てきます。
例えば、最近追加した「通貨・換算レート」のページだけでも、
- スナップショット
- ティッカー
- BID、ASK、OFFER
- レートソース
- フォールバック
- レートマスタ
のような言葉が出てきます。
金融商品の名前だけを集めた用語集では、金融系SEが実際に困ったときには足りないと思いました。
そこで金融知識ページ全体に出てくる言葉を改めて洗い出し、用語集をかなり拡充しました。
現在は859語になっています。
さらに、表記が少し違うだけで検索できないのも不便なので、略語や別名、ひらがな・カタカナ、全角・半角などでも探せるようにしました。
本文を読んでいて分からない言葉があれば、その文字を選択して、その場で用語集を調べられる機能も追加しました。
最初は「用語集のページを一つ作る」という感覚でしたが、今は金融知識ページ全体で共有する辞書に近いものになっています。
全体を見ると、まだ抜けているものが見つかる
今回面白かったのは、全体を整えていくと、それまで気付いていなかった抜けも見つかることでした。
例えば最近、「そういえば換算レートについてまとまった説明がない」と気付きました。
外貨を円換算するとき、単にUSD/JPYのレートを使えばいいわけではありません。
何のために使うレートなのか。いつの何時時点なのか。どこのデータなのか。BIDなのかASKなのかMIDなのか。
金融系システムではかなり基本的な話なのに、商品ごとの説明を作っているだけでは、こうした横断的なテーマが抜けてしまうことがあります。
そこで「金融商品・銀行業務の共通基盤」に「通貨・換算レート」のページも追加しました。
個別ページを増やしているときには見えなかったものが、全体を並べ直すことで見えてくる。
今回の改修では、そういうことが何度もありました。
書く作業から、整える作業へ
最初の頃は、「次は何のページを作ろう」と考えることが多かった気がします。
今は少し変わってきました。
新しいページを作ることより、
- このページは他の商品と同じレベルで説明できているか
- 初めて読む人が途中で疲れないか
- 別のページと説明が食い違っていないか
- 用語が分からなくなったときに調べられるか
- サイト全体として同じ操作感になっているか
といったことの方が気になるようになりました。
正直なところ、ページを新しく作るより、すでにある大量のページを一つの考え方で整え直す方が大変でした。
一か所直すと別のところが気になり、そこを直すとさらに別のところが見えてきます。
なかなか終わりません。
でも、今回かなり手を入れたことで、少なくとも以前よりは「金融系SEが必要なところから入り、分からない言葉を調べながら読み進められるサイト」に近づいたと思っています。
これからもページを増やすだけではなく、ときどき全体を見直して、読みづらくなっていないか、説明のバランスが崩れていないかを確認していこうと思います。

